2023/06/24
海外でインターナショナルスクールや現地校にお子さんが通う場合、とくに日本に戻る可能性もあるのであれば、日本語での教育をどうするかが、親にとって悩みの種になることが多いです。
そこで、OWL Investmentsの代表(小峰孝史)が香港に住んでいたころ、2人の子供を通わせていた進学塾epis Education Centre(以下「EPIS」)の仲田先生に、海外で学ぶ日本人の子供たちのバイリンガル教育について聞いてみました。
OWL:海外で学ぶ日本人の生徒たちは、とくに英語力という点でアドバンテージがあると思いますが、どれくらいの英語力でしょうか?
仲田;英語力は高いですね。
海外に住んでいるとはいえ、日本人学校に通っている生徒の場合、日本国内の学校に通っている子と変わらないと思われかも知れません。しかし、テスト結果を見ると、日本国内の子に比べて英語の点数は高いです。
英検でいうと、中学3年で英検2級を取得している子が多いですね。
OWL:そうすると、海外に住んでいれば、日本人学校に通っていても、英語力は十分身につくと思ってよいのでしょうか?
仲田:英検や受験英語の点数としては、日本国内で勉強している子より上に行っています。しかし、海外の日本人学校に通っているだけでは、英語を自由に話せるようになるというのは難しいでしょう。
OWL:インターナショナルスクールに通っている生徒の場合はどうでしょうか?
仲田:企業の駐在で海外に住む場合、3年くらいの滞在が多いですが、3年ではネイティブスピーカーのレベルには達しないです。
とはいえ、小学校の低学年、だいたい3,4年生くらいからインターナショナルスクールに通った生徒であれば、英語がかなり身につきます。
OWL:もう少し年齢が高くなってからインターナショナルスクールで学んだ子の場合は、どうでしょうか?
仲田:香港の場合、日本人学校は中学校までしかありませんから、高校だけインターナショナルスクールに通う生徒も少なくありません。
そういう生徒たちを見ていると二極化している印象です。
一つ目のグループは、英語を上達させようと自ら取り組み、3年間の間に、TOEFLの点数で100点から110点くらいに達する生徒です。
TOEFLの点数が100点以上あれば、一流大学にも入れますから、かなり英語力を伸ばしたと言える子たちです。
二つ目のグループは、インターナショナルスクールに3年間通っても、TOEFLの点数が60点程度にとどまる生徒たちです。
TOEFLの点数が60点程度というのは、英語圏の大学に進学するためのスタートラインにも達しているとは言い難いレベルです。
OWL:この二極化の原因は何でしょうか?
仲田:小学生のうちは親が環境を整えるだけで何とかなりますが、中学生以上になると本人がやる気を出すか否かが大きいですね。
OWL:逆に、海外で生活する日本人の子供たちの弱みは何でしょうか?
やはり、日本語が弱点になるのでしょうか?
仲田:たしかに、日本語が弱点の子供たちはいます。
まず、両親のうち一方が外国人で、インターナショナルスクールに通っていて、日本国外の大学を目指しているような子の場合、日本語が弱いのも仕方無いところです。
一方、両親とも日本人であっても、インターナショナルスクールに通っている子の場合、日本語で文章を書いたりするとき、文法が若干間違っていたりすることも無いではないです。
でも、さきほど英語レベルの二極化について述べましたが、その二極化のうち上の層の子の場合、文章の中身が優れていることが多いです。ですから、文法の間違いを指摘して直してあげるだけで、あっという間に上達します。そのため、彼らに関して、日本語が弱点だと感じることは少ないですね。
OWL:日本語力以外で、海外で生活する日本人の子供たちの弱みはありますか?
仲田:日本語力以上に問題になりやすいのが、カリキュラムの「抜け」ができてしまうことです。
香港に来てインターナショナルスクールに通っている子の場合、インターナショナルスクールではまだ扱っていないが、同学年の日本のカリキュラムではすでに終わっていることもあります。
そういう子が日本に戻ったとき、カリキュラムのある部分が丸ごと抜けてしまっているということがあります。
とくに、算数・数学で、こうした「抜け」が生じやすいですね。
OWL:算数・数学で、一度「抜け」が生じてしまうと、そこから先で追いつけなくなりそうで怖いですね。
仲田:はい。ですから、日本の学校に戻ることを考えている子の場合、日本のカリキュラムに沿った勉強を教える塾で、勉強を補っておく必要があると思います。
OWL:ここまでの「まとめ」的に質問したいのですが、2,3年くらい海外に暮らして子供に英語を学ばせようとする場合、何歳くらいからスタートするのが良いでしょうか?
仲田:まず言えることは、2,3年ほど海外で生活したからといって、ネイティブスピーカーのように英語を話せるようにはならないということです。
とはいえ、日本語ができているという前提であれば、学年が低い時点で海外に出る方が、英語力は身に付きやすいでしょう。
2,3年も海外のインターナショナルスクールで学べば、英語を聞いて理解することができるようになります。いわゆる「英語耳」ができます。
だから、2,3年だけで「英語をできるようになった」とは言えないまでも、将来、海外留学するとか、英語を仕事で使うようになるとかした場合には、他の日本人と比べて物凄くアドバンテージにはなるはずです。
epis Education Centreの概要
香港(香港島、ホンハム)、中国(深セン、蘇州)、オーストラリア(シドニー、メルボルン、ブリズベン)、インド(グルガオン)に教室がある、進学塾。
小学生の中学受験、中学生の高校受験、高校生の大学受験を幅広くカバーしている。
仲田先生の経歴
2010年よりepis Education Centre香港教室(Causeway Bay)。九龍教室(現ホンハム教室)責任者を経て、2015年中国・蘇州教室開校のために赴任。2017年より香港教室責任者として香港地区2教室の統括に携わる。指導教科は、英語を中心に文系科目。中学入試、高校入試、大学入試において、帰国生入試から難関校一般入試の受験指導、英語については学習初心者からインター・現地校生の指導まで幅広く携わる。