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世界最大の暗号資産取引所Binance日本居住者向けサービス終了の衝撃(第1回) ~ 海外の銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所、これら事業者は日本居住者に対してサービス提供をできる?

2023/09/03

外国には、魅力的な商品・サービスを提供する銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所がある!

香港のHSBC銀行をメインで使ってきましたが、オンラインバンキングや海外送金など非常に便利ですし、売られている金融商品も非常に魅力的です。
銀行・証券会社以上に魅力的なのは保険かも知れません。利回りは日本の同種商品を大きく上回っていますし、ローンで保険料を払う商品(プレミアムファイナンス)など、日本には存在しないサービスまであります。
さらに、ここ10年登場してきた新たな投資である暗号資産を扱う暗号資産取引所も、世界トップの取引所は、日本の暗号資産取引所に比べ手数料が安いうえ、取扱トークンの種類が豊富など、魅力的です。

こうした海外の業者が、日本居住者に対してサービス提供してくれるならば、日本の消費者・投資家としても嬉しい限りでが、こうした海外の業者が、日本居住者に対してサービスを提供することが法的に可能なのでしょうか?
さらに、これらを踏まえつつ、昨年(2022年)の末から今年(2023年)の夏にかけて暗号資産投資家の間で衝撃が走った「世界最大の暗号資産取引所Binance(バイナンス)から日本居住者が追い出される!」という重大事と対応策を考えてみようというのが、本稿の趣旨です。

(Binanceの創業者・CEOチャンポン・ジャオ氏)

銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所は、日本の法令で規制された「規制業種」
銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所、こうした業種はいわゆる「規制業種」ですから、銀行の免許、証券会社の登録、保険会社の免許、暗号資産取引所の登録をして初めて、業務を行うことができることになります。
たしかに、顧客から預かったお金や株式を適切に管理することができないような銀行・証券会社では、顧客の資産が守られるか不安ですから、銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所が「規制業種」とされているのも、当然でしょう。

では、さきほど取り上げたような、外国の銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所は、日本で業務をできるでしょうか?
たしかに、外国では許可・登録などされているのであれば、一定水準には達していると言える訳で、日本で業務しても構わないようにも思えます。
しかし、仮に外国で許可されていたとしても、その国で業務を行うことが許可されているにすぎません。
日本で許可されていない業者は、日本国内で業務を行うことはできません。
そのため、外国の銀行・証券会社が日本居住者向けに金融商品を売りに行く、外国の保険会社が日本居住者に保険商品を売りに行く、外国の暗号資産取引所が日本居住者に対してサービスを提供しに行くことはできません。

(香港の金融エリアを、ビクトリアハーバーの反対側から望む)

外国の銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所は、自国内で業務をしているのであれば、日本居住者に対してもサービス提供をできるのか?

一方、当たり前ですが、外国の銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所は、その国では業務を行うことができます。
そうだとすると、外国の銀行・証券会社、保険会社、暗号資産取引所は、自国内で通常通り業務をしているのであれば、顧客がたとえ日本居住者であろうと、サービスを提供できるように思えます。
ところが、そう簡単ではありません。

まず、①銀行・証券会社の場合はどうでしょうか?
例えば、香港やシンガポールの銀行・証券会社は、日本居住者であっても、実際に香港やシンガポールに来たお客さんに対しては、口座を開設してくれます。
いったん口座を開設すれば、オンラインで取引をすることも簡単ですから、継続的に取引をしている人も大勢いらっしゃるでしょう。

次に、②保険会社の場合はどうでしょうか?
実は、外国の保険会社は、日本居住者が「たとえ実際に外国(その保険会社の国)に来たとしても」保険商品を販売することはできないのです。
香港やシンガポールの保険会社で売っている保険商品は、日本の保険会社の商品に比べて利回りの良い商品などが多いだけに残念です。わざわざ外国に出向いて商品を購入する消費者については、「消費者保護」という建前は通用しないでしょう。とすると、日本の金融庁はそうした商品を日本の消費者の目に晒したくないのでしょうか。

さて、③新参者の暗号資産取引所の場合はどうでしょうか?
暗号資産取引所は、銀行・証券会社のように「自国内で通常通り業務をしている場合であれば、相手が日本居住者であっても、サービスを提供することができる」のでしょうか?それとも、「自国内で通常通り業務をしている場合であっても、相手が日本居住者のときは、サービスを提供することができない」のでしょうか?
結論から言うと、保険会社の場合と同様に、自国内で通常通り業務をしている場合であっても、相手が日本居住者のときは、サービスを提供することができない、という制度になっています。
暗号資産取引所の場合、店舗の窓口に出向いて口座開設をするというのは一般的でなく、オンラインで口座開設をするのが通常という事情も、この背景にはあるのでしょう。

制度として合理的か否かについては議論あるところだと思いますが、保険会社と同様に、暗号資産取引所の場合も、外国の暗号資産取引所は、日本の領土の外であってさえも、日本の法令に従い、「日本居住者に対してサービスを提供しない」というルールに従うことが求められているのです。

とはいえ、Binance(バイナンス)は日本の領土の外にあり、日本の金融庁は簡単に手出しできないはずです。そして、これまでは手出しできず、日本居住者向けにもサービス提供をしてきたのです。
どうして、ここへきて、サービス終了になったのか、次回(第2回)、論じていきます。

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