コラム
Column

最初のロシア出張のとき、冷たい雨に濡れた石畳で転んで手を血だらけにした話

2021/03/09

初秋9月とはいえ、極東ロシアのウラジオストクの夕暮れ時は、東京に住む日本人の想像する9月ではなかった。冷たい雨に降られていたせいもあって、体感気温では東京の12月の雰囲気だった。
石畳は、見た目こそ優雅だが、濡れると滑りやすい。
冷たい雨で濡れた石畳の急な坂道で滑って転び、手のひらが血だらけになった私は、消毒薬を求めて、薬局を探していた。

「日本から一番近いヨーロッパ」などと言われることもあり、欧州風の街並みを求めて訪問する観光客もいると言うウラジオストク。
だが、私の出張の目的はビットコイン・マイニング工場の立ち上げだった。そして、この出張の目的達成の目途もまるで立たず、最悪だった。

ビットコインが送金される際、コンピュータで計算して確認作業を行う。この計算をした人に対して報酬としてのビットコインが支払われる。作業報酬としてビットコインを得ることが、地中から鉱物を掘り出す行為に似ているので、「マイニング(採掘)」と言われる。
この「マイニング(採掘)」のために専用コンピュータ(マイニング機器)を24時間稼働させるので電力の安い場所が望ましい、マイニング機器は高熱を発するので冷涼な場所が望ましい、また、マイニング機器の工場はほとんど中国にあるので中国から近い場所が有利だ、と言われる。
その程度のアバウトな目算から、日本からも中国からも近く寒いロシアにマイニング工場を作ろうと思い立ち、日本から一番近いロシアの都市であるウラジオストクに飛んだのだが、ロシアについての事前情報も少なく、現地に来てから苦しんでいた。

ロシアとの通商団体のロシア人と知り合って事前打ち合わせをしており、ウラジオストクの担当者を紹介してもらっていたものの、ウラジオストクでの繋がり(人脈というレベルには至らない)が、それくらいしか無かった。
マイニングをするための場所探しも、本当に手探りで、不動産会社に飛び込んでビルや空き工場を探してみたりした。
2012年のAPEC会議の会場となったルースキー島、経済特区で税金面の優遇があるという話を聞き、ここにも行ってみた。
果ては、(ウラジオストクといえど夏は多少暑くなるので)夏でも涼しい場所が良いだろうと考え、スケート場の中の空き部屋を借りようとスケート場を訪問してみたりと、かなりの試行錯誤を続けていた。

ウラジオストクで確認すべきことは、場所探しだけでなく、山ほどあった。
ロシアにマイニング機器を運ぶにはどのルートを使ってどうしたらよいのか。
ロシアにマイニング機器を運ぶにはロシア法人を設立する必要があるのか。
ロシア法人を設立するには現地在住の取締役が必要なのか。
ロシアにマイニング機器を運ぶためにはロシアの銀行口座を開設する必要があるのか。
ロシアでの口座開設のためにはどうしたらいいのか。

こうした問題を解決するには、現地の弁護士や会計士と会って話すのが早いのだが、英語のできる弁護士や会計士が思うように見つからなかった。

私達は、香港で何年もビジネスをやってきたし、中国や東南アジアでも経験がある。だから、海外でビジネスを立ち上げる方法は、それなりに分かっているつもりで、初めての国であっても何とかなるという自信はあった。
それでも、ロシアでは勝手が分からないことだらけだった。
当時は、こんな細かい一つ一つが模索続きだった。

出張中、ウラジオストクの商工会議所のような団体を訪問し、話を聞いたところ、ウラジオストクは、ロシアの中で電気代が安い方とは言えず、むしろ、シベリアの方が安いことが分かった。
この情報が決定打となり、マイニング工場の候補地をウラジオストクからシベリアに移すことにした。

今にして思えば、この程度の事前準備でよく現地に飛んだな、と笑って話せる。
でも、雨の降るウラジオストクでの試行錯誤があってはじめて、私達の今のマイニング工場があり、皆様のマイニング機器をお預かりできるまでになっている。
ロシアでマイニングを始めた頃の最初の気持ちを忘れないためにも、ここに書いて残しておくことにした。

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