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世界最大の暗号資産取引所Binance日本居住者向けサービス終了の衝撃(第2回) ~ 日本の金融庁は、日本国内のグループ会社を「人質」にとって、外国業者に日本のルールを守らせている?

2023/09/04

香港・シンガポールの保険会社・暗号資産取引所、本来であれば自国では自由に営業できるはず。しかし、日本の法令のために、日本居住者に対してサービス提供ができないが、どうやって外国の業者にその法律を守らせる?!

日本の領土の中にいる人は、日本の法律を守らなくてはいけません。しかし、外国(日本以外の国)の法律を守る必要はありません。
同様に、例えば、香港の保険会社は、香港の法律を守らなくてはいけないのは当然として、日本の法律を守る必要は無いはずです。
しかし、日本の法律が香港の保険会社に対して、「香港内で通常に営業している場合であっても、日本居住者に対して保険商品を売ってはいけない。」と禁止しているのです。
同じく、日本の法律が外国の暗号資産取引所に対して、「自国内で通常に営業している場合であっても、日本居住者に対して暗号資産のサービスを提供してはいけない。」と禁止しているのです。
ところが、日本の規制当局(金融庁)がこの「禁止」というルールを守らせることは簡単ではありません。
日本の規制当局は、日本の領土の中であれば業者に対して立入検査などの実力を行使できますが、外国にある業者に対してはそうした実力行使はできないからです。

ほとんどの外国の保険会社は、日本の金融庁に「人質」を取られているため、日本の法令を守っている?

しかし、香港などで話を聞く限り、意外にも、ほとんどの保険会社は日本居住者に対して保険商品は売っていないのです。
これは、こうした香港の保険会社は、グループ内の系列会社(日本法人)があって日本でビジネスをしているため、グループ全体として、日本の金融庁に背くことはできないという事情があるためと思われます。
いわば、日本国内のグループ会社が「人質」に取られているため、日本国外の保険会社であっても、日本の法規制に従わざるを得ないのです。

外国の暗号資産取引所は、「日本居住者にサービスを提供してはいけない。」という法令を守ってきた?
では、保険会社と同様に、「日本居住者にサービスを提供してはいけない。」というルールを課されている外国の暗号資産取引所の場合はどうでしょうか?
率直に言って、この「日本居住者にサービスを提供してはいけない。」というルールは守られていなかったと思われます。
世界シェア50%を上回り、世界最大の暗号資産取引所と言われるBinance(バイナンス)は、日本でもユーザーが非常に多く、Binance(バイナンス)は当然のように日本居住者に対してもサービスを提供してきました。
多少とも日本の金融庁に配慮することがあったとするならば、その操作画面上から日本語案内を削除してみたりする程度のことでした。

もちろん、金融庁も策を講じていない訳ではありませんが、海外の事業者に対して対抗できる策は限られていて、警告を発し、金融庁のウェブサイト上に「無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等について」と掲載するのがせいぜいのところでした。
https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/kasoutsuka_mutouroku.pdf

外国の暗号資産取引所も日本の金融庁に「人質」を取られた?

ところが、そんなBinanceのやりたい放題が突然に終わります。
それは、2022年11月30日、日本の暗号資産取引所であるサクラエクスチェンジビットコインをBinanceが買収すると発表した日でした。
同日の日本時間18時、Binanceは日本居住者による口座開設を中止しました。
さらに、2023年5月26日、Binanceは、同年11月30日をもって、日本居住者の既存口座に対するサービス提供も終了することを発表しました。
これは、Binanceが日本進出(既存の取引所を買収)したことにより、日本国内で金融庁の監督を受けるグループ会社ができた、つまり、日本の金融庁に「人質」を取られたことによる、と言ってよさそうです。
Bainance Japanは、2023年8月1日、営業を開始しました。その取扱銘柄は34種類と日本国内最多を誇ります。
しかし、Binance Globalが300種類を上回っているのには全く及びません。また、先物取引を含むデリバティブ取引も扱っていません。
つまり、日本の金融庁がBinanceに日本の規制を守らせたことにより、日本の投資家は不便になってしまった訳です。

では、日本の暗号資産投資家は、Binance Globalのような海外の使いやすい取引所を使うことができないのでしょうか?ありうる対応策としては、2つ考えられそうです。

第1の方法:海外居住者としてBinanceを使っていく!

まず、一つ目の方法は、海外の居住者としてBinanceを使っていく方法です。
日本国籍を持っているというだけでBinanceを使えない訳ではなく、日本居住者にはサービス提供をしないというだけですので、日本人であっても、日本以外の国・地域の居住者であれば、Binanceの口座開設をする・既存口座を使っていくことはできます。
「海外居住者になる」というと、もの凄くハードルが高いように感じる人もいるかも知れません。
しかし、ある国・地域の長期ビザを取得して、その国・地域に住所を持つだけで「居住者」になることができます。
アメリカやイギリスのビザを取って移住するのは大変!という話を聞いたことのある人も多いでしょうけれども、簡単にビザ取得をできる国もあるのです。

(東南アジアのタイは長期ビザを取得しやすい国の一つ、高級ホテルやショッピングモールの並ぶエリアにそびえる高層コンドミニアムで暮らす富裕層も多い)

第2の方法:海外在住の「自分の分身」がいたら、Binanceの口座を開設できる!

会社(法人)というのは、面白い存在です。
本来、人間だけが、資産を持ったり契約を結んだりできる存在のはずです。しかし、会社(法人)は人ではないのですが、法律上は「人」であるというフィクションにより、資産を持ったり契約を結んだりできる存在になりました。
私が多くの事例を見てきた香港や中国でいうと、オーナーは中国本土に住んでいるけれども、香港やカリブ海のタックスヘイブンに会社を持っている例が非常に多くみられます。
自分の体は中国本土にありながら、「自分の分身」が香港やカリブ海のタックスヘイブンにあるようなものです。

(国境を越えた別の国・地域に、自分の分身があるに等しい)
となると、その「海外にいる自分の分身」である海外法人(たとえば香港法人)がBinanceに対して、サービス提供を求めたらどうなるでしょうか?
Binanceとしては、香港法人が口座開設を求めてきたのを断る理由もなく、こうした法人による口座開設は認められてしまうのです。

2回にかけて世界最大の暗号資産取引所であるBinanceの事例を考えてきましたが、人も金も国境を越えて動く現代、一国の法規制だけで国民の自由を縛ることは難しいということを、実感することができます。

OWLは、海外法人(香港法人、シンガポール法人、BVI法人)を設立したうえで、Binanceの法人口座を開設するサポートをしています。
https://owl-investments.com/service/hitori_crypto_fund

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