2015/08/17
8月11日、香港警察は、おとり捜査(5人の捜査員がそれぞれスマートフォンのUberアプリを使って5台のサービスを予約の上、香港各地から乗車、目的地に到着後、クレジットカードで支払いを終えた際に運転手に対して身元を明かした)を行い、道路交通条例違反で逮捕しました。さらに、Uberのサービスを香港で展開するUber Technologiesのオフィスを捜索し、タクシーの無免許営業の疑いで従業員3人を逮捕しました。
OWL InvestmentsのFacebookページでもお伝えしていましたが、既存のタクシー業者によるUberへの反発が強まる中、香港でもUberを摘発せよとの抗議行動が活発化していました。こうした抗議行動が、今回の摘発の背景にあると見られます。
一方、8月14日、中国政府系ファンド(SWF)の中国投資有限責任公司(CIC)が東南アジアのタクシー配車アプリ大手、GrabTaxi(グラブタクシー)に出資する見通しであることが、Wall Street Journalにより、明らかになりました。グラブタクシーは現在、4億ドル近くの資金調達計画を進めており、CICはほかの投資家とともに出資すると見られています。この資金調達によりグラブタクシーの企業価値は16億-18億米ドルと評価されます。
グラブタクシーは、2012年にマレーシアで設立され、現在はシンガポールに本拠を持つタクシー配車アプリ運営会社です。現在では、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンで展開されています。
グラブタクシーは、日本人にとっては、2014年12月4日にソフトバンクが2億5000万米ドル(約300億円)出資し筆頭株主である、と言えば、分かりやすいでしょうか。
タクシー業界は非常に厳しい規制業種です。そして、規制業種に入っていき、既存の利権を持っている人たちと真正面からぶつかりつつ、「既得権益をぶっ潰す!」と叫べば、既得権益の側から猛反発を食らうことは当然です。(香港について言えば、タクシーのライセンスが投資の対象になっていて、約700万香港ドル=約1億500万円の価値があります。Uberが広まって、タクシーライセンスを無価値にしてしまうと、確実な投資と信じてタクシーライセンスに投資してきた人々が激怒することは確実です。)
グラブタクシーが、うまく立ち回っているのかなと思えるのは、規制業種に切り込んでいきながら、規制業種の既存プレイヤーと真正面から対立せず、既存プレイヤーに利益を落としていこうとしているところでしょう。
こういったところ、米国人がアジアに進出しても、なかなか上手に立ち回れず、日本人を含むアジア人の方が上手に立ち回れそうです。