2016/03/22
香港の銀行(HSBCなど)や証券会社で口座を開いて金融商品をいろいろ買う人が増えてきています。
御自身が亡くなられた後のことまで考えていれば良いのですが、相続のことを考えていないケースも多いように見受けられます。
香港に財産を持つ人が亡くなった場合、どうやって相続するのでしょう?そして、香港に財産を持つ人は、自身が亡くなった場合に備えて、どのような準備をしておくべきでしょう?
日本人が亡くなり相続人も日本人の場合、遺書があれば遺書に沿って分割、遺書が無ければ遺産分割協議書を作成して、手続を進めます。
亡くなった方が香港にも財産を有していた場合も、香港の遺産も同様に、日本の遺書に沿って、または、遺産分割協議書で分けようとするかも知れません。
しかし、香港に残された遺産については、後述の「遺言執行状(Probate)」または「遺産管理状(Letter of administration)」という承認を裁判所から得ない限り、管理処分をできないのです。
つまり、香港の遺産は、日本の遺書または遺産分割協議書に基づく手続だけでは不十分ということになります。
亡くなった方が遺言書を残し、遺産を管理処分する責任者である「遺言執行者(Executor)」を指定している場合、遺言執行者として指定された人は、「遺言執行状(Probate)」という承認を裁判所から得て、遺産を管理処分することになります。
一方、亡くなった方が遺言を残していなかった場合、誰かを「遺産管理人(Administrator)」(=遺産を管理処分する責任者)の候補とします。その候補者は、「遺産管理状(Letter of administration)」という承認を裁判所から得て、遺産を管理処分することになります。
このように、その後の手続が全く異なりますので、香港に遺産を残して亡くなった方がいる場合、遺言の有無を確認しなくてはなりません。
遺言書には、遺産内容が一覧になっていますので、「遺言執行者(Executor)」が管理処分権を行使できる対象が明確です。しかし、遺言が無い場合、どのような財産を残して亡くなったのかを確認するのが大変な場合もあります。
遺言書には、誰を「遺言執行者(Executor)」にするかを(通常)指定していますので、その候補者が裁判所の承認を得れば手続きをすすめることができます。しかし、遺言が無い場合、相続人の中で配偶者→子供→親→兄弟姉妹の順で上位の者が「遺言執行者(Executor)」になります。ということは、日本人の場合、日本の戸籍をもとに相続人が誰であるかを確定させて公証役場で公証してもらう必要があり、どうしても手続が複雑になります。
ここまでの話を読んで、香港の相続は非常に面倒くさいと思った人が多いと思います。その最大のポイントは、裁判所の手続の面倒でしょう。
ここで、比較対象として、日本の相続を見てみましょう。
日本の場合、「被相続人が死亡すると同時に一切の相続財産が相続人に移る」、つまり、「相続人全員による共有になる」、と考えています。
そして、被相続人が遺言を残している場合には遺言執行者が遺言に従って相続財産を管理しますし、遺言を残していない場合には相続人が自ら相続財産を管理することになります。
つまり、相続の手続において、裁判所の承認は必要とされていません。(注:遺言の検認のため裁判所が関与することはありますが、これは偽造等がないか確認するための例外的なものです。)
香港では、被相続人が死亡した場合、被相続人の財産が自動的に相続人に移るとは考えず、いわば清算財団のような特殊な財産になります。
この相続財産の管理処分は、人格代表者(Personal representative)が行いますが、裁判所の承認があってはじめて、可能になります。
こうした裁判所による手続は、遺言があっても無くても必要です。遺言がある場合の手続は、プロベートの付与(Grant of probate)、遺言が無い場合の手続きは、遺産管理上の付与(Grant of letter of administration)です。
したがって、相続財産の管理処分は、遺言があっても無くても、裁判所の承認があってはじめて可能になるのです。
このように、日本の相続と香港の相続とは、根本的考え方が大きく異なり、結果として、手続も大きく異なっています。
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