2015/10/07
内容を熟読せずに契約書にサインすると大変なことになります!と言ってはいるのですが、うっかり契約書にサインしてしまう人は後を絶ちません。
Aさん(在香港日本人)とBさん(在香港日本人)は、共同で会社Xを設立、2人とも取締役としてビジネスをしていました。
しばらくして、Aさん・Bさんは共同で会社Yも設立しました。Aさんは会社Yの事業に力を注ぐことになりました。会社XはもっぱらBさんが運営、Aさんは、会社Xは時々チェックするだけになりました。
鬼の居ぬ間にではないのでしょうが、Bさん、会社Xの金(約400万香港ドル)を自分名義の銀行口座に送金するという大胆な方法で横領してしまいました。
さすがにAさんも、この横領に気づき、Bさんを問い詰めました。金を返せ、これ以上共同での事業は出来ない、という訳です。
動かぬ証拠があったため、Bさんも観念。金を返す、会社XはBさん、会社YはAさんが継続しようということで、両者は合意に達しました。
Bさんが和解契約書をドラフトしてAさんに提示。両者ともにサインして一件落着。のはずでした。
しかし、サインしようとしたAさん、契約書を読んでみると、「BさんがAさんに400万香港ドルを返還する」どころか、「AさんがBさんに400万香港ドルを渡す」との内容。話がまるで逆です。しかも、横領という文言はありません。
この点が気になったAさん、Bさんに確認すると、
その1:「さすがに横領という言葉は勘弁してください。」
その2:「会社Yの株式を私が手放し、会社Xの株式を私が受け取るでしょ。その金額の精算があるじゃないですか。」「横領の金額、X社・Y社の株式の金額はきちんと精査すべきですが、まずは、和解契約書にサインしておいて、詳細は後で詰めましょう。」
Aさんは、納得するような納得しないような感じでしたが、Bさんと議論し続けるのも不快で、早く片付けたかったこともあり、サインしてしまいました。また、X社の株式はBさん、Y社の株式はAさんが100%保有する形に移転するための書面にもサインしました。
さて、残された和解契約書の主な条項は:
金銭の支払い:AさんがBさんに対し、400万香港ドルを支払う。
清算条項:両者の間には本契約に定める外、何らの債権債務もない。
この和解契約書から分かることは、①AさんがBさんに対し、400万香港ドルを支払う、ということと、②両者の間には本契約に定める外、何らの債権債務もない、ということです。
契約書にサインする前、Bさんは、「横領の金額、X社・Y社の株式の金額はきちんと精査すべきですが、まずは、この金額でサインしておいて、詳細は後で詰めましょう。」などと言っていました。
しかし、この契約書にサインをした後、Aさんが、詳細を話し合うことを要求しても、Bさんは、「両者の間には本契約に定める外、何らの債権債務もない。」と書いてある契約書を盾に突っぱねるばかり。
さて、Aさんは、プロフェッショナルの助けを借りてリカバリーを図ったのですが、その方法はどうだったのか?
リカバリーは、本連載「その2=紛争解決・逆襲編」で書きますので、皆さんも考えてみてください。