2016/04/09
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の2016年4月3日に発表により、「パナマ文書」と言われる世界各国の政治家や富裕層の機密情報が流出したことがニュースになっています。
そのデータ量は2.6テラバイトに及び、1万4000の金融機関とその顧客21万4500社の税務情報が記載されているということです。
このニュースにより、オフショアの国・地域での会社設立・口座開設は違法、情報流出により逮捕、というようなイメージを持つ方もいらっしゃるかも知れません。
そこで、まずこの記事では、「パナマ文書」を作成していた法律事務所がどういう法律事務所だったのかを考えてみます。そのうえで、次回以降、明らかになった情報、違法性のありそうな行為、適切なオフショア法人設立・口座開設について考えたいと思います。
会計事務所は、大手4社(Deloitte、Ernst & Young、KPMG、PwC)への集約が進み、寡占状態になっています。
しかし、法律事務所は、集約が進んでおらず、英国系・米国系を中心に、多くの有名事務所が併存しています。
英国系で有名な事務所としては、Allen & Overy 、Freshfields Bruckhaus Deringerなど(主要な5つの事務所は「Magic Circle」と呼ばれます)、米国系で有名な事務所としては、Baker & McKenzie、Skadden, Arps, Slate, Meagher & Flomなどがあります。
パナマ文書を作成したモサック・フォンセカ法律事務所は、これらの有名な法律事務所とは全く異なる業務をしています。両者を比較する場合、上にあげた「普通の」法律事務所を「オンショア事務所」と呼び、モサック・フォンセカ法律事務所などを「オフショア事務所」などと呼ぶことがあります。
どう違うのかを見る簡単に知る方法があります。「オンショア事務所」の所在地は、ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、東京、香港、シンガポール等、いわゆる国際都市です。
では、モサック・フォンセカ法律事務所はどうでしょうか?
もちろん、香港やシンガポールのように、「オフショア事務所」のオフィス所在地とかぶる都市もありますし、ロンドンなどにオフィスがあるオフショア事務所もあります。
しかし、ケイマン諸島、英領バージン諸島、バミューダ、マン島、ジャージー島、ジブラルタルなど、いわゆる国際都市ではない都市、しばしば「タックスヘイブン」と言われる地域が大半です。
モサック・フォンセカ法律事務所のウェブサイトを見ると、取扱業務が掲載されています。このうち、会社法務、金融法務、知的財産などというのは、他のオンショア事務所と変わらないように見えます。
オフショア事務所の特徴的な業務は、何でしょうか?
まず、いわゆるファンド業務です。例えば、日本でも外国籍の投資信託が数多く販売されています。証券会社などに、「●●ファンド、ケイマン籍契約型外国投資信託」などと書かれたパンフレットが置いてあると思います。ああいった金融商品は、数多くの契約の束のようなものなのですが、そうした契約を作っていく作業です。
また、オフショア法人を用いたストラクチャー組成の業務です。
これは、特に中華系企業に当てはまるのですが、実際のビジネスは中国本土で行っていても、持株会社は中国本土の外(オフショア)にある、という例が非常に多いのです。
このことは、OWL Investments
の別記事にも書いてありますが、香港証券取引所に上場している会社の約80%以上の会社がケイマン諸島法人であるというデータもあるほどです。
【2013年末の国籍別の香港証券取引所の上場企業数】
また、上場している法人の下にぶらさがっている中間持株会社としては、英領バージン諸島(BVI)法人が用いられる傾向にあります。
当然のことですが、こうしたストラクチャーを作ること自体、違法性はありません。(違法であれば、そもそも上場もできません。)
このように、中国企業が持株会社をケイマン諸島やBVIなどのオフショアに置くことが多いこともあり、オフショア事務所は、香港に多数あります。
私共も、オフショア法人を用いたストラクチャーの作成などで、オフショア事務所の香港オフィスと共同で仕事をすることが少なくありません。
オフショアを活用したストラクチャーを考えるのであれば、オフショア事務所などの社会的インフラの整った香港が最適ではないかと思います。
オフショア法人を活用し、将来の上場・資本提携を意識した香港法人(香港会社)設立を行いたい方、OWL Investmentsにご相談ください。
問い合わせ用メールアドレス:info@owl-investments.com