コラム
Column

なぜ香港の株式市場に上場する「香港企業」が少ないのか?(2)

2015/07/20

そもそもケイマンってどんなところ?

前回、中国の企業家が、ケイマンや香港の会社を利用したストラクチャーを多用していることについて触れた。その背景について探る前に、「そもそもケイマン」ってどこ?と思う人が多いだろう。

ケイマン諸島国旗
ケイマン諸島の国旗

ケイマンはカリブ海のキューバの南方に位置する小さな島である。人口は6万人に満たない、イギリスの領土である。

カリブ海といえば、、、、ビーチリゾートである。。

ケイマンのビーチ
ケイマンの海辺

ケイマンも例外にもれず、香港の喧騒とは無縁なビーチリゾートである。なぜ、こんなビーチリゾートと香港の証券取引所が関係してくるのだろうか?

香港証券取引所ではケイマン法人がなぜ利用されるのだろうか。

(1) 世界中からの投資を受ける「受け皿」としての役割:

香港は歴史的に世界中の投資家から資金を集めてきたため、ケイマンやバミューダの会社ような、どの国からも投資をする場合でも、上場会社のレベルでは課税をされない「投資の受け皿」が必要であった。

日本から香港証券取引所に上場するケイマンの会社の株式に投資をしてもうけた場合、日本に住んでいる投資家であれば、株式で得たもうけを、日本の税務署に申告して納税をする必要があるが、香港やケイマンの「投資の受け皿」側で税金を課せられることは無い。

仮に「投資の受け皿」の上場会社が日本の会社(日本で設立した「株式会社」)だったらどうだろうか。

例えば外国に住む投資家が、日本の会社の株式の持分25%以上を保有している場合を考えてみよう。この投資家が保有している日本の会社の株式を5%以上売却した時に、もうけが発生していると、日本の税務上の規則では、日本に居住していないにもかかわらず、日本で税金を払った上に、残りのもうけに対しても、投資家が住んでいる国の税金がかけられてしまう可能性がある。

投資家としては、自国での株式のもうけに対する税金の他に、日本の「投資の受け皿」でも二重に税金が発生してしまうのである。

どの国の投資家にとっても、住んでいる国で税金がかけられるのであれば、当然払うものの、それに加えて、上場している国や地域のレベル、つまり「投資の受け皿」のレベルで税金をかけられることが無いのがケイマンやバミューダの会社が「投資の受け皿」として投資家が好む大きな理由である。

(2) 匿名性、情報の秘匿性

もう一つの重要な要素は、株主などの素性が公開されない、という匿名性や、投資した際の条件が公開されない、という情報の秘匿性である。

香港の会社は、株主構成、取締役会のメンバー、定款まで全て公開されており、非常に透明性が高過ぎる、という点で投資家にとっては「不便」である。

香港の会社は、日本の法務局に相当するCompanies Registryのウェブサイトで、だれでも株主の名前、取締役の名前、定款を閲覧することができる。さらに、投資家がどのような株価で株式を引き受けたのか、まで分かってしまう。

自分が今どこに投資をしていて、どのような条件で投資をしているのか、だけでなく、自分がいくらで株を買ったのかを他人に知られてしまうことは、投資家としては、自分の手の内をさらすようなものである。

ケイマンの会社であれば、株主構成、取締役、定款全て非公開となっていることから、投資家にとっては匿名性が非常に高いし、株式の増資の条件は一切公開されないことから、情報の秘匿性も高い。

(3) 上場前の印紙税の節約

さらに、香港の会社の場合、上場会社、非上場会社であるかにかかわらず、株式の売買に際して、取引された会社の株式の価値に対して印紙税(Stamp Duty)が0.2%かけられる。ケイマンの会社の場合、香港に拠点を置いたり、香港証券取引所に上場をしていないのであれば、香港の印紙税が課されることはない。

たかが0.2%、と思うかもしれないが、100億円の株式譲渡であれば、2,000万円の印紙税がかかるのである。取引金額が大きくなればなるほど、これは大きい。

法人税等が一切かからないケイマンのような国・地域は「タックスヘイヴン」と言われ、最近では日本のマスコミでも巨額の損失を隠蔽したオリンパス事件の際に、ケイマンの会社が悪用され、マスコミの批判の対象となった。

果たして、ケイマンの会社を利用する企業家は、ケイマンの会社を使って、脱税をしているのだろうか?これについては、続編で述べていきたい。

OWL Investmentsより

香港法人(香港会社)設立の時点では、香港証券取引所への上場や香港・中華系の財閥との資本提携などを考えていなくても、2,3年で香港の事業が軌道に乗り、上場や資本提携を考えるケースも多いです。

しかし、会社の規模が大きくなってから組織再編をすると税金の問題が生じてきますので、香港法人(香港会社)設立の段階から、将来の上場・資本提携を意識して香港法人(香港会社)設立をすることをお勧めします。

将来の上場・資本提携を意識した香港法人(香港会社)設立を行いたい方、OWL Investmentsにご相談ください。

問い合わせ用メールアドレス:info@owl-investments.com

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