2015/09/27
香港では、様々な投資の話を聞くことがあります。登録された金融商品取扱業者から金融商品への投資だけでなく、登録されていない業者経由でファンドや不動産への勧誘の話を聞くことも少なくありません。
業者も商品も未登録(ノー・ライセンス)の投資話は原則シャットアウトというのは、もちろん正しい選択です。
でも、そうした投資が全て詐欺という訳ではなく、登録・許認可の手続に金がかけたくないから手続をしていないだけで、事情通の投資家が参加を募っている場合もあるのです。業者も商品も登録されていない投資話にサインしたという行為を一概には否定できません。
業者も商品も未登録(ノー・ライセンス)の投資話にサインをして金を入れたが、運用者からの連絡が徐々に来なくなってしまった、詐欺ではないかと疑う気持ちと相手を信用する気持ちが相半ばするとき、どういう手段を取りうるかを、今回は考えてみましょう。
「マレーシアで都市開発の計画があり、一等地のマンションに金を出さないか?」と香港在住の日本人投資家X氏に誘われたA氏、X氏と共同でマンションを購入する旨の契約書(日本語)にサインをしました。
が、どうも、都市開発自体が進んでいない様子。
A氏を誘ったX氏は、「Aさんの出したお金はAさんに返しますよ!」と調子の良いことをいっているのです。A氏が何度か催促すると、X氏は、やむなく返済計画書(日本語)を作ってきました。
それにもかかわらず、X氏は、「最近、私の事業が思わしくないので、少し待ってくださいね。」と言って、引き伸ばされてしまっています。(このマンションの写真は、イメージです。)
返金する気が全く無いという訳ではないと思うのです。決して不誠実ではないのです。(だからこそ、A氏もコロリと信用してしまっているのですが。)
でも、X氏の中では、重要な取引先などへの支払いが最優先、A氏への支払いは優先順位が低いのでしょう。だから、返済計画通りに払ってきていない。
こういう場合、A氏サイドのアドバイザー・弁護士が中心になって、契約書を作り、可能であれば担保などを取ってしまえばよいと思います。そうすれば、X氏の重要な取引先と同程度に(あるいは、それ以上に)「絶対に支払わなくてはいけない相手」というレベルに格上げされるでしょう。
投資話に乗ったA氏は、「私は性悪説で考えたくないのです。Xさんは、悪い人ではないと思いますよ。」と(この期に及んで)仰っていました。確かに、話を聞く限り、X氏は悪い人だとは思えないのです。
変なたとえ話ですが、私の高校時代の話をしてみます。
英語・数学・物理と三科目で宿題が出た日、学校で宿題が出た時には、「三科目とも宿題やらなきゃ!」と思っていても、家に帰って漫画を読んだりテレビを見ているうちに、宿題をやる気がだんだん無くなってくる、なんてことがよくありました。
でも、そういうときでも、数学の先生が厳しいと、英語や物理の宿題は後回しにしても、数学の宿題だけは終わらせる、なんていうことがありました。厳しい相手方(先生)の出した課題だけは、優先順位が高まるのです。
心が弱い人(私)でも、厳しい相手に対してだけは約束を守るのです。
投資話に乗るとき・返金を求めるとき、相手を信用するのは構いません。しかし、相手の中で自分の優先順位だけは高めておきましょう。
契約書を作る(とりわけ担保を取る)というのは、相手(詐欺っぽい話を持ってくる事情通)の中で、自分の優先順位を高めるための有効な手段です。