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東京一等地の2億円タワマン…日本人の頭越しに争奪戦を繰り広げる、外国人たちの熾烈な戦い

2023/11/18

香港人の東京タワマン購入戦記

タワーマンション(「タワマン」)を購入するのは日本人だけではない。
私の会社は、外国人が日本の不動産を購入するのを手伝うことがある。今回は、香港で仕事をしていた時代の知人が東京で不動産を買うというので、私自ら案内し外国人目線の投資を目の当たりにした。

不動産投資の好きな香港

まず、香港人にとって不動産投資がいかに身近かを書いておこう。

香港の市街地では、100m×100mの1ブロックに2,3軒は不動産屋があると言って過言でない。そして、新築マンションが建つとその販売の広告が車一面にラッピングされたバスが町中を走っていることも多い。

(香港の町中を走る、不動産販売の全面広告付きバス)

さらに、海外不動産投資も盛んである。

旧イギリス領だけにイギリスの不動産投資は盛んで、イギリスの不動産販売のイベントは多いし、イギリスの不動産販売を専門に扱う業者もある。

日本の銀行に「外国の不動産を購入するためにローンを組みたい」と言っても直ちに却下されるだろうが、香港では、ロンドンの不動産を担保にロンドンの不動産購入のためのローンを組むこともできる。

なぜ、香港人が東京のタワマンを買うのか?

今回、物件探しで同行した香港人は、香港とイギリスに不動産を所有している弁護士だ。もともと日本が好きで、よく日本に遊びに来ている。
日本で大手法律事務所の弁護士というと深夜まで仕事をしているイメージだが、海外ではそこまで激務ではない。しかも、この香港人弁護士は仕事をセーブして、楽しみながら仕事をしたいと思っているようだ。そこで、日本にセカンドハウスを買い、今まで以上に日本に滞在していきたいと思っている。

どういう物件を希望したのか?

希望は以下のようなものだった。

1.場所:東京の交通至便な一等地(山手線の駅の近く、または、山手線の内側で地下鉄の駅の近く)。
2.広さ:50平米程度。
3.予算:2億円以内。
4.施設:スポーツジムがあること。

これらの点を、少し掘り下げてみよう。

場所へのこだわり

マスコミ報道などで、「豊洲などのベイエリアのタワマンを中国人が爆買い」などという記事を見ることもある。
たしかに、投資目的の中国人の中には、こうした人もいるようだ。
しかし、セカンドハウスとして使う目的で豊洲などベイエリアの物件を選ぶ人は多くないようだ。
想像して欲しい。1回1週間くらいの長さで年に3,4回ほど東京に来る外国人は、豊洲のようなファミリー向け住宅地に滞在したくはないのだ。かといって、交通の便が良ければ良いというのではなく、外国人観光客の多い「おのぼりさん」的な場所も嫌という、なかなかアンビバレンツな感覚を持っている。
今回の香港人弁護士の場合も、単なる投資目的ではなく、実際に使うことも考えているだけに、東京でよく行く渋谷、原宿、表参道などに行きやすい場所、それでいて、落ち着いた場所を希望してきた。

場所へのこだわりには、便利さを求めてというだけでなく、金銭的な理由もある。
いずれ本格的に日本に住むとしたら、もう少し広い物件に住み替えることを考えているので、売却するとき値段が下がらない場所を欲しい、という意図もあった。

現金一括払いで2億円のタワマン

日本人にとって2億円のタワマンというのは、非常に高価な価格帯である。しかし、香港人にとっては高価というほどではない。
というのも、香港で、香港島のビジネスの中心地である中環(Central)から近い高級住宅地である半山区(Mid-Levels)でマンションを買おうとすると、築5年程度の中古マンションの約50平米の部屋でも4億円くらいする。だから、日本のタワマンは非常に安く感じてしまうのである。

補足すると、外国人で日本非居住者だと、日本の銀行でローンを組むことはできないし、香港の銀行は日本の不動産を担保にとってローンをつけてくれることも無い。だから、現金一括払いである。

香港では「タワマン」というのは特殊な存在ではなく、30階以上の高層マンションが一般的だが、ある程度以上きれいな高層マンションには、ジムが付いているのが一般的で、プールが付いていることも多い。
この香港人弁護士の場合、日頃から運動したいということもあり、ジムを希望してきた。
しかし、日本のマンションにはジムが無いものも多いということを説明したところ、近くにジムがあるのであれば、マンションにジムが無くても構わない、と希望を修正してきた。

一流デベロッパーへのこだわり

当初の希望には挙がっていなかったが、途中からデベロッパーを気にし始めた。
香港のマンションは、築10年にもなると、かなり古びてしまう物件もある。その一方、一流のデベロッパーが開発した物件は、管理が行き届いて古びない。
日本の場合は香港ほど差が出ないのだが、一流デベロッパーが手掛けた物件であれば、古くなっても値が下がらない、ときには「ビンテージマンション」と呼ばれるまでになることもある。
そうした話をするうちに、この香港人弁護士もデベロッパーがどこかを気にするようになった。

東京のタワマン市場は、外国人同士が争う戦場

この香港人弁護士は、これまで物件探しのために東京に2回訪問してきた。
そして、最後に気に入ったタワマンは、リビングから六本木ヒルズと東京タワーが一望できる最高のビューを誇る物件だった。

まさにこの物件を買おうと香港の銀行にも連絡したその矢先、不動産業者からのメールが届いた。
「今日、内見したお客様が現金一括で購入されました。」
どうやら、外国人が見て即座に購入したようだ。購入寸前にさらわれてしまった。いまや、東京のタワマン市場は、外国人が現金一括払いで争って買う戦場なのだ。

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