2015/09/01
香港法人を設立し香港の銀行に口座開設すれば、簡単に資産隠しをできますよね?と聞かれることがあります。しかし、半分正しいが半分間違い、というのが正直な回答です。
「半分正しい」の方からいきましょう。
香港の会社(香港法人)は株主・取締役とも登記情報で公開されるため、ある法人の株主や取締役が誰であるかは、誰でもインターネットで簡単に調べることができます。しかし、「ノミニー」という形式的な株主・取締役を用いれば、実質的株主・取締役の名前を隠すことができ、この「ノミニー」を使って実質的株主・取締役の名前が隠されていることも少なくありません。
また、日本では、会社の取締役になることができるのは自然人だけですが、香港では法人が取締役に就任する法人取締役も認められています。
これらを利用し、Xさんという日本人が、香港にA社という会社(香港法人)を設立(形式的株主=B社、形式的取締役=B社)して、A者名義の銀行口座を開き、資産隠しをしているケースも少なかったように思います。
確かにこうした点だけ見れば、香港で会社設立・口座開設をすれば、香港に資産を隠し持って将来の相続・贈与の際の税金も回避できる、と考える人がいるのも分かります。
しかし、香港・日本双方の規制がどんどん厳しくなっています。
まず、香港では2014年に施行された新・会社条例により、少なくとも1名は自然人の取締役を置くことが定められ、法人取締役だけの会社は認められなくなりました。
そのため、今では、自分の名前を出さずにノミニーだけで会社を維持するには、自分個人の名前を登記簿に掲載するノミニーを探す必要があります。でも、よく知らない日本人のために自分個人の名義を貸そうというまともな人が、そうそういるでしょうか?それに、そういう人が株主・取締役を務める会社の銀行口座に自分のお金を安心して入れられますか?
また、香港の銀行は、反マネーロンダリングのため行内の審査が厳しいのですが、近年ますます審査の厳しさが増しています。(銀行内のコンプライアンス部門と営業部門の駆け引きもあると思われ)口座に預け入れる金額の多寡にもよるように見えますが、株主も取締役もノミニーという会社では口座を作ってくれない・既存口座も閉鎖を求められる等の事態も少なくありません。
さらに、日本側の法規制も、国外財産調書制度の創設、同制度の罰則規定の適用開始など、どんどん厳しくなっています。
国際協力も活発になってきています。例えば、「租税に関する相互行政支援に関する条約」(税務行政執行共助条約)は、締約国間で、租税に関する以下の行政支援を相互に行うための多数国間条約であり、日本の加盟し、2013年10月1日に発効しています。
つまり、今は見つかりにくい方法があっても、将来も見つからない保証は全くありません。
資産隠しなど違法な目的のために香港法人や銀行を利用するという香港活用法はお勧めできません。適法な方法だけでも十分に香港は活用しがいのある金融都市だと思います。適法な目的で香港を活用しようという方を、OWL Investmentsは全力で応援します。
問い合わせ用メールアドレス:info@owl-investments.com
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