2016/08/18
2014年7月、OECDにより、「租税条約に基づいた非居住者の金融口座情報を各国税務当局間で自動的に交換するための国際基準」が発表されました。
OWL Investmentsサイトにも記事をアップしてきましたが、日本・香港間では2018年から、以下の情報が、香港の税務当局から日本の国税庁に提供されることになります。
つまり、香港の銀行口座にある残高、香港の証券会社においてある商品の時価や配当など、あらゆる情報が日本の国税庁に提供されるとみておいた方がよいでしょう。
国税庁に情報提供されても問題ない人であれば良いのですが、若干後ろめたい部分のある方々でしょうか、「自動的情報交換が始まっても、私の情報は国税庁に提供されませんよね?」という質問が増えてきました。
そこで、今日は典型的質問とそれらへの回答をまとめてみます。
この自動的情報交換制度は、非居住者(香港の銀行で言えば、香港非居住者)の口座情報を日本の国税庁に提供しようという制度です。ですから、香港の銀行口座開設サポート業者から香港の住所を提供してもらい、口座開設時の用紙にその住所を書いていれば、香港居住者の口座という外見を作り出したと言えそうです。
しかし、本当の香港居住者でない訳ですから、香港居住者であれば当然備えているはずのもの(典型的には香港IDカード)が無いなどの理由で、香港非居住であることが銀行にばれてしまい、非居住者の口座に分類され、日本の国税庁に情報提供されてしまう可能性は否定できないでしょう。
上の写真は香港IDカード(このサンプルは永住権を有している人用のもの)
香港の法人は、株主や取締役の情報が登記され、誰でも見ることができます。これにより香港法人は透明性が確保されているのですが、自分の名前が公開されることを望まない人もいます。そこで、別人を「ノミニー」として立て、自分の名前が登記に出ないようにして法人設立をすることがあります。日本居住者が香港で資産隠しの目的で香港法人を設立する場合、ノミニーを使って法人設立をすることが結構多いようです。
さて、ノミニーを使って設立した香港法人名義の口座であれば、口座情報は日本の国税庁に提供されないでしょうか?
銀行(例えばHSBC香港)は、法人名義の口座の場合、最終的な実質的所有者(Ultimate beneficial owner)は誰かを確認します。それに、銀行口座のサイン権限者(Signer)も登録します。
ですから、ある法人の株主・取締役として別人(ノミニー)を使っても、実質的所有者が別の人であって、その人は日本居住者だということは、銀行に知られてしまうでしょう。
もちろん、そのノミニーの人に、香港法人の株主・取締役だけでなく、サイン権限者にもなってもらい、銀行で「私が実質的所有者(Ultimate beneficial owner)です。」と言ってもらえば、銀行ではそれ以上、追及しようがありません。おそらく、その口座の情報は日本の国税庁には提供されないでしょう。実際、この方法で法人設立・銀行口座開設をしたいと相談してくる方々もいらっしゃいます。
でも、サイン権限まで渡すということは、口座の中の財産をすべて持ち逃げされる危険がある訳で、とてもお勧めできません。
現在、100以上の国・地域が、OECDの共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換を2018年までに開始することを表明しています。
そして、先進国はもとより、オフショアと呼ばれる国・地域も数多く含まれています。具体的には、アンギラ、英領バージン諸島(BVI)、ケイマン諸島、バミューダ、セイシェル、モーリシャスなどです。
ですから、香港の法人・口座の情報は日本の国税庁に提供されてしまうが、オフショアの法人・口座の情報であれば提供されない、などということはありません。
OWL Investmentsは、香港で既に会社設立をした方が、2018年の自動的情報交換に向けてどう対策をすべきかを一緒に考えていきます。
問い合わせ用メールアドレス:info@owl-investments.com
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