コラム
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大手日系証券会社も出資するシンガポールのクリプト企業は、クリプト投資をどう変えていくのか?

2024/10/08

暗号資産に対するイメージが、ICO投資で一気に財産を増やした「億り人」のイメージ、「うさんくさい」というイメージのまま、2017年から変わっていない方はいませんか?
しかし、日本でも世界でも、暗号資産業界(クリプト業界)は、どんどん変わっています。
今回は、伝統的金融業界の影響を受けてクリプト業界がどう変わっているのか?を聞くべく、シンガポールを拠点に活動するPenguin Securities Holdings Pte. Ltd.(以下、「Penguin」)の瀬戸口様にお話をうかがいました。

伝統的金融業界とクリプト業界の乖離をうめたい!

OWL:Penguinはいつ設立されましたか?

Penguin:イギリス育ちでJPモルガンやBNPパリバにてグローバルなチームのマネジメント経験が長い川辺、同じく外資系出身でクリプトヘッジファンドにも在籍していたトレーダーの瀬戸口、サイバーセキュリティのベンチャーを約200億円で事業売却し次の挑戦を探していた若手連続起業家の倉富、この3名が中心になって、2023年2月、シンガポールで設立しました。

OWL:Penguinの目指すものは何でしょうか?

Penguin:暗号資産は新しい資産クラスとして認められつつある段階であり、様々な投資チャンスに溢れていますが、課題が多く存在することも事実です。伝統的金融業界の知見を活用して課題には正面からしっかりと取り組みつつ、投資チャンスを活用することによって、真にお客様のためになる商品・サービスを提供することを目指しています。

シンガポールのマリーナベイに集まった会社メンバー

クリプト業界を見ていると、伝統的金融業界とクリプト業界、日本と外国、大企業とスタートアップとの間で、業界の常識から知識・経験・規制・リスク許容度・経営スピード・カルチャーまで、至る所に物凄い乖離があって、どうしても相入れないところがあります。
一例として、口座開設のための本人確認(KYC、Know Your Client)など、伝統的金融業界では1年近くもかかることがありますが、クリプト業界のペースから見たら遅すぎます。
かといって、アンチマネーロンダリング規制など、雑にはできない部分もあります。

伝統的金融と比べると、既存の暗号資産レンディングサービスには多くの問題がある!

OWL:具体的な商品のレベルで見ると、これまでの暗号資産運用商品は、伝統的金融業界から見ていかがでしょうか?

Penguin:さまざまな暗号資産取引所やその他事業者がレンディング(取引所や事業者が暗号資産を借り受け、その対価として賃借料を提供する)を提供していますが、カウンターパーティーリスクや利益相反の面で問題があります。
有名な暗号資産取引所であっても、どの国・地域にあって、どの国・地域の規制に服しているのか、よく分からない取引所も少なくありません。
そうすると、トラブルが発生した場合には、どの国のどういう規制に服しているのか分かりませんし、どの裁判所に訴え出ればよいかも分かりません。これでは、他人勘定での運用(預かった資産の運用)や上場企業のように説明責任の求められる会社では使えませんし、個人の運用だとしても透明性に欠けます。

OWL:さきほど、「トラブルが発生した場合」と仰いましたが、そもそも暗号資産のレンディングサービスではトラブルが発生しやすいということもありますか?

Penguin:はい、暗号資産運用商品の仕組みは、伝統的金融と比べると未発達な面があると思います。
たとえば、投資信託の場合、投資家の資産を預かるカストディ業務の主体運用方針を決める主体は峻別されています。さらに取引のマッチングを行う取引所はその外にあります。峻別することによって、特定の人達が勝手なことをできない仕組みになっています。

伝統的金融におけるファンドの典型的仕組み

クリプト業界でのレンディングの典型的仕組み

一方、暗号資産の運用では、取引所へのレンディングが典型ですが、一つの会社が顧客資産を預かって運用・保管・分配を一手に行う形です。
伝統的な金融商品で行われている業務内容による分権がされていないため、特定の人達が勝手なことをできてしまい、トラブルが発生しやすい体制です。

伝統的金融業界の経験を活かした暗号資産デリバティブを提供

OWL:こうした従来の暗号資産運用に比べて、貴社はどのような商品を提供しているのでしょうか?

Penguin:広告・勧誘規制の都合上、あまり具体的な商品・サービスのお話はできないのですが、傘下のPenguin Securities Trading Pte. Ltd.(シンガポール籍の企業でシンガポール法に服する)として、暗号資産デリバティブを活用した商品(裁定取引を用いたステーブルコイン運用など)を提供しています。

先述の適切な分権がなされていないという問題を解決するため、取引所機能と信託機能をしっかり分離し、取引所に直接入金することなく取引を行っておりますので、暗号資産取引所の倒産リスクから隔離されていることが弊社の大きな特徴です。

また、暗号資産に関する全般的なコンサルティング業務も営んでいます。ここでは、会計士や弁護士など外部の専門家とも連携しながら、税金や海外移住などもサポートしていきます。いわば、暗号資産を重点的に扱うプライベートバンクという位置づけです。

OWL:暗号資産デリバティブについて、シンガポールではどのような規制になっているのでしょうか?

Penguin:暗号資産デリバティブ商品は、シンガポール金融管理局(MAS)の規制対象外ですが、今後規制を受けることになっても良いよう万全の体制で取り組んでいます。
一方、傘下にあるもう一社Penguin Securities Pte. Ltd.は、暗号資産及び伝統的な金融資産のブローカレッジ業務に加えて暗号資産と株・債券・商品・為替など伝統的な金融資産を組み合わせたハイブリッド商品を提供できるようMASの認可を申請中です。

シンガポール金融管理局(MAS)

富裕層向けのビジネスに取り組んでいきたい!

OWL:Penguin Securitiesを見ていて目を引くのは、大和証券グループ本社が出資していることですね。どういった戦略があるのでしょうか?

Penguin:大和証券グループ本社にとっても暗号資産関連ビジネスは関心の高い事業領域です。2018年にFintertech株式会社を設立して暗号資産担保ローンを提供していますし、昨年2023年には暗号資産の自動損益計算サービス「クリプタクト」を運営している株式会社pafinにも出資しています。アジアのクリプト・ハブであるシンガポールにおいてさらに事業を推進し知見を蓄積するため、今回弊社とも資本業務提携をご締結いただきました。大和証券グループ本社執行役員の板屋様には社外取締役としてもご指導をいただいております。
大和証券グループ本社はシンガポールにプライベートバンク部門をお持ちですので、同じく世界の富裕層を対象顧客としている弊社との相乗効果にも期待しています。

OWL:どういった投資家に向いているとお考えでしょうか?

Penguin:主に3種類の方々を考えています。
第一に、伝統的な資産運用をしている方です。こうした方々に、資産の一部を暗号資産に振り分けていただきたいと思っています。
第二に、これまで暗号資産中心に投資をしてきた方です。こうした方々が、資産の一部を伝統的金融資産で運用されることのお手伝いをしていきたいと思っています。
第三に、日本国外に移住される方です。こうした方々に、日本ではなかなかアクセスすることのできないような投資商品・サービスをご提案していきたいです。

インタビューを終えて

クリプト業界に対しては、先進的な感じを持つ人も多いでしょうが、いかがわしさを感じている人もまだ少なくないでしょう。
しかし、クリプト業界と伝統的金融業界とのギャップはだんだん埋められてきて、一般的な投資家にも手を出しやすくなってきている、そうした印象を持ったインタビューでした。

2024年9月6日インタビュー

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