2016/04/06
香港島の北岸を東西に走るトラム。
前回の記事「香港の路面電車(Tram)は、観光にも日常の足にもお勧め!」では、トラムの西の始発駅は、堅尼地城(Kennedy Town)から金鐘(Admiralty)まで乗りました。今回は、金鐘(Admiralty)から東に向かいましょう。
駅でトラムを待っていると、次々に電車がやってくるのですが、車両が微妙に違っています。
一番多いのは、1986年から1992年にかけて古い車両の車体を更新したものです。第6世代車両と言われています。
この第6世代車両に外観は似ているのですが、行き先表示がLED化されているのが、2009年以降製造されている車両。座席もきれいですし、停車駅の案内放送もされるという具合に進化しています。(逆に言うと、この最新型以外には車内放送がなく、車窓を見て自分の判断で降りるしかありません)。もっとも、いまだに冷房が無いという致命的な弱点があります。
第6世代車両は、「古い車両の車体を更新した」と書きましたが、更新していない車両が1両だけ残っているのです。それが、1949年製の120号車なのです。
香港のトラムは全面広告なのですが、この120号車だけは、部分的にクラシカルな広告が付いているだけです。
車内に入ると、木製の窓枠にニスが塗られ、天井には白熱灯が輝き、第2次世界大戦直後の雰囲気が漂っています。
1両しか走っていないので見かけることも稀です。貸し切り列車のときには、この120号車指定で貸切をする人もいるくらい、香港人にも人気なのです。
このエリア、湾仔という名前のとおり元々は湾だったのですが、埋め立てが進んで直線的な海岸線になり、さらに今では海側に半島状に突き出してしまっています。でも、このトラムは、湾仔がまだ湾だった頃の海岸線に沿って建設されたので、丸く湾曲したルートになっています。
荘士頓道(Johnston Road)に面した「和昌大押」と書かれた建物が見えてきます。ここは、1888年から1900年ころに建設され、「和昌大押」という質屋として使われてきた建物ですが、今では、「The Pawn(質屋という意味)」のイギリス料理店になっています。
香港では珍しい歴史的建造物なので、この前で撮影をしている人も結構見かけます。
1980~90年代、伊勢丹、大丸、三越など日系デパートが数多く香港に進出していました。ところが、不動産賃料の高騰に伴い1990年代終わりから次々と閉店、日本資本のデパートとして最後まで残っていた三越も2006年に閉店してしまいました。
今でも、日系デパートの名残はあり、「大丸」行きと表示された銅鑼湾に行くミニバスが走っています。香港人の間では今でも「大丸」は銅鑼湾のランドマークなのです。
そんな中、銅鑼湾そごうは、いつ行っても買い物客であふれかえっています。2000年のそごう破たんに伴い日本のそごうとは資本関係が切れ、香港資本(利福國際)のデパートになったのですが、「そごう」という日本の名前が残っているのは嬉しいですね。
トラムの本線は、堅尼地城(Kennedy Town)から筲箕湾(Shau Kei Wan)まで、そして支線は、銅鑼湾(Causeway Bay)付近から跑馬地(Happy Valley)に向かっています。
本線を走る電車でも途中駅どまりのものもあり、その中でお勧めなのが、北角(North Point)行きの電車です。
香港の街市(マーケット)は、政府が設立したビルの中のものに移っていますが、町の路面店が残っている場所も多いのです。そして、北角はそうした昔ながらの路面店が多く残り、北角行きのトラムは本線から離れて路面店や屋台の間を縫うように走るのです。
北角ではこんな風景が日常的に見られるので、北角のターミナル周辺で撮影されたトラムの写真も良く見かけますね。
観光で香港を訪れる方も、香港で暮らし始めた方も、香港で長く住んでいるけれども乗る機会の無かった方も、是非トラムに乗ってみてください。香港の見え方が変わってきますよ。