2016/02/18
日本の法人税は地方税を加えた法定実効税率で約35.64%(東京都の場合)ですが、香港の法人税は16.5%と半分以下です。
この低税率をできる限り活用したいですから、自社グループで上がる利益を香港法人に集約したくなってきます。
しかし、ここで「移転価格税制」という縛りがあります。
まず、「移転価格税制」の縛りが存在しないと仮定して、どのような方法で節税できるか、考えてみましょう。
【ストラクチャー1】 ある会社(ソミー日本)はテレビの製造販売をしています。テレビの製造販売のコストは50,000円のところ、100,000円で消費者に販売しました。
⇒この場合、日本法人は50,000円の利益を得ることになります。
【ストラクチャー2】 ある会社(ソミー日本)はテレビの製造をしています。テレビの製造のコストは40000円のところ、41,000円でグループ内の販売会社である香港法人(ソミー香港)にテレビを販売、ソミー香港は販売コスト10,000円を費やして100,000円で消費者に販売しました。
⇒この場合、日本法人の利益は1,000円、香港法人の利益は49,000円となります。
ストラクチャー2のように、グループの中に香港法人を作りその香港法人に安く販売する、それにより、日本法人は利益が出ないように、香港法人では利益が出るように、組織を作ることができるのです。
このストラクチャー2では、香港法人を販売会社として作り、日本法人・香港法人の間の売買の金額を相場よりも著しく低く抑えることで、利益を移転させました。
しかし、他の方法もありうるでしょう。
例えば、香港法人を設立し、その香港法人を(建前上)グループの戦略立案拠点とする、そして、日本法人・香港法人の間にアドバイザリー契約を結び、多額のアドバイザリー報酬を支払うという方法もありうるでしょう。そうすれば、日本法人が生み出した利益を、アドバイザリー報酬という名目で香港法人に移し、日本法人に利益がほとんど出ない形にすることができるでしょう。
さらに言えば、実際に香港法人が販売スタッフを雇用して販売している必要さえ無いかも知れません。
ソミー香港は名ばかりのペーパーカンパニーで実体が存在しない、実際にはソミー日本の従業員が営業活動している、それにもかかわらず、ソミー日本がソミー香港に販売しソミー香港が消費者に販売という形式をとっている、というストラクチャーも考えられそうです。
つまり、ストラクチャー1(ソミー日本が消費者に直接販売)と実態は全く変わらないのに、「ソミー日本⇒ソミー香港⇒消費者」という販売の形式を取るだけで、節税できてしまうのです。
でも、そんなに甘い話はなかなかありません。
このような節税を認めていたら、日本政府は税金を取りっぱぐれてしまいます。
そこで、日本法人(ソミー日本)が香港法人(ソミー香港)に対して不当に安い値段で卸すことで利益を移転させていることを追及する、これが、移転価格税制です。
ストラクチャー2について述べると、グループ外の香港のテレビ卸売会社に対しては50,000円で卸していたのに、グループ内香港法人であるソミー香港に対しては41,000円で卸していた場合、9,000円の利益が不当に香港法人に移転されていたと見るのです。そして、ソミー香港に対してもソミー日本は45,000円で販売していたとみなして徴税する制度です。
もちろん、規制に反しない形で節税する方法は色々あります。
しかし、違法でない節税を考えるためにも、移転価格税制を含めた税制は知っておく必要がありそうですね。
香港法人(香港会社)を設立する際、単に御自身(個人)が株主となって設立するだけでなく、他のオフショア法人も組み合わせたストラクチャーを作る等、様々なストラクチャーを考えることができます。
また、こうしたストラクチャーは、香港証券取引所への上場や香港・中華系の財閥との資本提携などにも効果的なことが多いです。ストラクチャーの問題は会社の規模が大きくなってから考えようという方も多いですが、会社が大きくなってから組織再編をすると税金の問題が生じてきますので、香港法人(香港会社)設立の段階から、将来の上場・資本提携を意識したストラクチャーの下で香港法人(香港会社)設立をすることをお勧めします。
香港法人を設立してグループの組織再編を考えている方、OWL Investmentsにご相談ください。
問い合わせ用メールアドレス:info@owl-investments.com
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