2016/01/02
日本へのインバウンド観光が盛り上がっています。
2014年の訪日観光客数は、過去最高の1036万人(2013年)を大きく上回る1341万人。2015年の訪日観光客数は、12月19日時点で1900万人を突破しています。
しかし、今後のさらなる増加へのボトルネックは、宿泊施設の不足。みずほ総合研究所のレポートによると、2020年時点での予測で、近畿圏での宿泊施設の不足が大きく目立っています。自身の経験から言っても、特に大阪への急な出張では、ホテルを見つけるのに苦労しています。
ホテル不足が叫ばれる中、住宅を宿泊施設として貸し出すAirBnB(エア・ビー・アンド・ビー)などの「民泊」が話題ですね。
収入は物件の場所・仕様などにもよるのですが、東京都中野区のメゾネット(普通に賃貸すると月額20万円で申し込みが入る物件)をAirBnBに貸し出すと収入が3倍になるとか、利回り32%にもなるとか、驚異的な話が飛び交っています。
私共のお客様の中にも、民泊をやりたい・やっているという方もおり、できる限りのアドバイスを差し上げています。
ただ、民泊については法的な問題が未解決でグレーな部分が残っています。
ここでは、①マンションを民泊用に貸し出せるのか、②(自己所有物件であるとしても)民泊用に貸し出すこと自体が許されていないのかを検討していきましょう。
マンションの場合、マンション管理規約に従う必要があります。そして、マンション管理規約には「専有部分は住宅として使うものとし、ほかの用途に供してはならない」という規定があることが一般的です。
では、民泊用に貸し出すことが「住宅として」使うことと言えるのでしょうか?
この点については明らかではありません。政府内でも意見対立があり、国土交通省は「住宅としての使用にあたらない」という考え方、内閣府は「住宅としての使用にあたる」という考え方とのことです。内閣府の考え方で政府がまとまれば、「専有部分は住宅として使うものとし、ほかの用途に供してはならない」という規定がマンション規約にあっても、民泊用に貸し出すことは禁止されませんが、国土交通省の考え方に従うと、禁止されてしまいますね。
さらに、近時のマンション管理規約の中には、民泊用の貸し出しを明示的に禁止するものもあるようです。こうしたマンション管理規約が定められていると、民泊用に貸し出すことは禁止されているとしか言いようが無くなってしまいます。
マンションの一室を賃貸借する場合、いちいち都道府県知事の許可を得る必要はありませんよね。
それに対し、ホテルや旅館が宿泊者に部屋を貸し出すには、旅館業法に従い都道府県知事等の許可を得る必要があります。ホテルや旅館は、その場所に不慣れな不特定多数の人が宿泊するから、衛生面や防災面で、普通の家よりも高度な規制が必要という趣旨ですね。
でも、「マンションの一室の賃貸借」と「ホテルや旅館の部屋の貸し出し」は、その境目が結構微妙な場合もあります。
かつて、ウイークリーマンションというビジネス形態がありました。これは、1週間の短期貸出し住宅ということで、旅館業法の許可は得ていませんでした。しかし、厚生省・厚生労働省は、ウイークリーマンションは旅館業法の対象に該当するとの通達を出し、ウイークリーマンションという業態は姿を消しました。今は、マンスリーマンションという形態に姿を変えています。(これは、上記の通達で、おおむね一か月以上の貸し出しであってはじめて、旅館業ではなく賃貸業である、と指摘したためです。)
このように、旅館業法+厚生労働省の通達を前提にすると、民泊は、旅館業法違反ではないかという疑いの残るグレーゾーンであると言えそうです。
グレーという不安な状況を脱出し、法的に問題ない形で運営するには、どうしたら良いでしょうか?次回、検討してみます。
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