コラム
Column

オックスフォード・ケンブリッジと監査法人の共催イベントで見た、香港スタートアップ事情!

2018/11/03

香港には金融業しかないとか、香港発の優れたスタートアップはないとか、そもそも起業家精神(アントレナーシップ)が無いとか、言われることもあります。 香港とアントレプレナーとは相性が悪いのか、裏付け調査をすべく、スタートアップ関係のイベントに参加してみました。

 

Oxbridgeの団体が監査法人(KPMG)とスタートアップイベントを共催。Oxbridgeとは何?

OWL編集部が参加したのは、「Oxbridge/KPMG Speaker Series」。

「Oxbridge」というのは、「Oxford(オックスフォード)」と「Cambridge(ケンブリッジ)」を合わせた言葉です。「早稲田」と「慶應」を合わせて「早慶」というのに似ていますね。香港は1997年の中国復帰まで英国植民地だったという歴史的経緯もあって、Oxbridge出身者が多く、Oxbridge関連のイベントもよく開かれています。

今回は、弊社マネージングディレクターの一人がオックスフォード大学大学院出身ということで、大学同窓会から連絡をいただき、参加することができました。

スタートアップ企業にとって香港の長所・短所は何か?

このイベント前半の第1部では、Alibaba Entrepreneurs FundのExecutive DirectorであるMs. Cindy Chow、Head of New Economy and Life Science KPMG Hong KongであるMs. Irene Chuから、香港のスタートアップに関する共同研究結果についてのスピーチがありました。

資本へのアクセス、(生産拠点である中国に近いなどの)地理的有利性が、香港の強みとして示されました。これは、分かりますね。

一方の香港の弱みですが、アントレプレナーシップが欠けていることとか、家族・友人からのスタートアップへの不理解が弱みである、と言われていました。いきなり、身も蓋もない率直な言い方です。

香港人は商売熱心だがアントレプレナーシップが欠けている?

一般的には「香港人は商売熱心で機敏に動く」と思われていますので、アントレプレナーシップの欠如と結びつきにくいかも知れません。

でも、「商売熱心で機敏だがアントレプレナーシップは弱い」というのは、私の実感とも合致します。ひとつ、あるアントレプレナーのイベントに参加したときの体験を書いてみます。

そのイベントでは、多くの起業家が新事業のプレゼンをしていたのですが、欧米人が多く、中国人か香港人かという顔の人がいると、欧米生まれ(例えば、英国生まれの中国人のことは、British Born Chinese、略して英国国営放送と同じく「BBC」)だったり、子供のころから十数年も米国に住んでいたりとか、黄色人種だけど中身は白人(外側が黄色く中が白いので「バナナ」とか言われる)だったりするのです。

彼らアントレプレナーを見ても、「香港人にもアントレプレナーはいる」とは言いにくいのです。

プレゼン後に軽食を食べながら自由に話し合える時間があり、香港的な英語で話しかけられて、「初めて純粋な香港人を見かけた!」と思ったところ、その人は、起業家向けに不動産を売り込もうとする不動産業者だった、というオチでした。

香港人が付きたい職業というと、金に直結しやすい医者、弁護士、金融、不動産と言われていますから。

(多くのスタートアップイベントでは、参加者同士が自由に話せる時間が設けられています。)

香港がスタートアップに不向きと言われる背景には何がある?

このように、スタートアップとの親和性が低いと言われる香港ですが、その背景に何があるのか、スタートアップ起業家が香港をどう使っていくべきか、後半第2部のパネルディスカッションの中で、いろいろ見えてきました。

この第2部では、第1部の2人に、スタートアップ企業のCEOが2人加わりました。 企業やメンバー内で用いることのできるSNSのようなソフトウェアサービスを提供するJuven LimitedのCEOであるMr Edmond Chan、眼の中に注射器を使わずに薬を注入できる新技術のハードウェアを開発中のOpharmic Technology (HK) LimitedのMr Langston Suenです。

この中で特に話題になったのは、香港の人材不足でした。

Juven社は、香港でソフトエンジニアを募集したが、良い人材を採用できず、海外で探さざるを得なかったということです。

また、Opharmic社では、香港からの応募よりも、事業内容に興味を持った海外の人の応募が多いとのことです。

これらの背景としては、香港の大学に優秀な人材がいても、投資銀行などの金融分野に進む人が多かったりして、スタートアップに優秀な人材が来てくれないという事情があるようです。

やはり、先に書いた、「香港人が付きたい職業は、金に直結しやすい医者、弁護士、金融、不動産」という、確実に金を稼げる仕事志向が原因のようです。

スタートアップは香港をどのように活用していくべき?

ここまでひたすら、香港はスタートアップに不向きという内容ばかり書いてきたので、スタートアップ企業にとって香港は意味がないのではないか、という誤解を招いてしまったかもしれません。

しかし、勿論そんなことはありません。 まず、香港は金融の拠点ですので、資金調達には向いています。

そして電車で1時間もかからない隣町の深センには、金属加工・プラスチック加工など旧来的な製造業から、半導体・モバイル・ドローンまで、ありとあらゆる製造業の集積があります。

ですから、この深セン・香港を含めた珠江デルタ地域の一体化がより深まれば、この地域は、スタートアップに向いているのではないか、という考えも示されていました。

香港の強み・深センの強みを組み合わせていったら、さらに巨大市場の中国の隣という強みも組み合わせていったら、スタートアップにとっても使いやすい地域になりそうです。

OWL Investmentsから

香港の特性を生かした起業を考えている方、ぜひ、OWL Investmentsにご相談ください。

問い合わせ先(OWL Investments):info@owl-investments.com

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