コラム
Column

マイニング機器を調達するのは簡単?大変?

2021/06/21

2021年3月8日のコラムで、「ビットコインの現物購入だと値上がりしない限り利益は出ない、でも、マイニングであれば値動きが無い場合や多少値下がりしている場合でも利益が出る。」と書きました。
しかし、当然、マイニングにも短所はあります。
準備作業が物凄く大変なことです。準備作業には、マイニング機器の入手、マイニング拠点への機器の搬送、現地スタッフとのコミュニケーションなど様々あるのですが、今日は、マイニング機器の入手で苦心したエピソードを話そうと思います。

マイニングというのは計算問題を解く作業なのですが、ビットコインが誕生して間もない頃は、マイナー(マイニングをする人・業者)達は、普通のコンピュータでマイニングを行っていました。
しかし、参加するマイナーが増えるにつれて、出題される計算問題の難易度が上がってきました。そこで、今では、多くのマイナーは、ASICというマイニング専用コンピュータを使っています。
ASICの製造会社は、ASICの初期のスタンダード「S9」を2016年に発売して以来Bitmainが世界最大のシェアを持っていると言われ、他の大手メーカーとしては、MicroBT(比特微)、嘉楠科技(canaan)、億邦国際(Ebang International)があります。

弊社は、2018年春、深セン市の電気製品を扱う問屋が多く集まっている地区にあるマイニング機器を扱っている問屋でいろいろ見たうえで、試験的にBitmain社のS9を、1台あたり約12万円で2台注文しました。
2019年に入ってから、弊社はマイニング機器の台数を増やし始めました。
当時は零細マイナーだった弊社は、通常の時期であれば、メーカーや一次卸から購入するのは難しかったと思います。
しかし、この時期、ビットコインの価格が低迷しており(1BTC=USD3,500くらい)で、マイニングには逆風のタイミングだったため、マイニング機器を買おうとする会社も少なかったのでしょう。
この逆風の状況が幸いし、当時は零細マイナーだった弊社も、メーカーやメーカーと直接につながっている卸売会社から、有利な価格で購入することができました。

ビットコインの価格が上昇を始めた2020年9月から、流れをつかむべく、弊社はさらにマイニング機器の台数を増やし始めましたし、弊社の顧客の中にもマイニングをしたいという方が増え始めました。
当然のように、他のマイナーもマイニング機器の入手に力を入れ始め、マイニング機器の入手が一気に困難になってきました。特に、年明けの1月になり1BTC=USD30,000を超えてからは、メーカーや一次卸に連絡しても、「年内の出荷分は全て予約済み」などと言われてしまい、最新機種(Bitmain社でいえば、S19)がほとんど在庫が無い状況になってきました。

●エピソード1
新しい卸売会社を探してそこから買うしかないと思うものの、1台約100万円のマシンを数十台~百台買うとなると、代金だけで数千万円~一億円。その金額を前払いで、マシンは数か月後の引渡しですから、新しい会社と取引するのは勇気が要るのです。
そんな中、マイニングの世界では比較的メジャーなウェブサイトを見ていたところ、Bitmain社のS19が「在庫あり」として表示されていたのです、しかも、その卸売会社は香港法人で、香港にオフィスがあるらしい。ウェブサイトにチャット機能がついていたので、チャットをしてみました。
———-
OWL:私達は香港にいるので、貴社オフィスに行きます。
その卸売会社:香港は倉庫だけで、オフィスは深セン(香港の隣にある中国の都市)にあります。
OWL:深センであっても構わないので、行きます。
その卸売会社:会うことはできません。
———-
その卸売会社(香港法人)の登記簿を取り寄せて確認してみると、取締役は南アジア某国の方で、その南アジア某国にお住いの様子。ちょっと怖くなり、その卸売会社からは、買いませんでした。

●エピソード2
メーカーから紹介された別の一次卸から最新機種40台の在庫があるとの連絡があったので、即レスで、40台すべてを購入するとのチャットをしました。そして、「入金はいつまでか?」と聞いたところ、「明日までに入金できないならば、他の客に売るよ。」とのこと。数千万円の機械の売買で、翌日までに入金を要求してくるというのは、かなり異例の強気だと思いますが、この強気も、在庫不足の状況下では仕方なかったのでしょう。さらに、チャットをやり取りしていると、「君達に売ったより高い値段で買いたいという人が出てきたんだよね、、、」という不穏な発言をしてきました。下手すると、その別の会社に売ってしまいそうな勢いです。慌てて、トラックをチャーターして、マイニング機器40台を引き取ってきました。

日本でフィンテックのスタートアップと言うと、洗練された「意識高い」イメージがありますが、中国のマイニング機器界隈はこんな泥臭い雰囲気なのです。
そして、私達OWLも、こんな泥臭い雰囲気の中で必死にマイニング機器を確保しています。

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