2016/07/07
香港の法人税率は16.5%と大変低くなっています。
そこで、香港法人(ペーパーカンパニー)を設立し、その香港法人(ペーパーカンパニー)に利益が貯まるようにしておけば、香港の低い法人税率が適用され、簡単にタックスメリットを享受できるように思うかもしれません。
日本法人・日本居住の個人が、直接に投資をする代わりに、香港にペーパーカンパニーを設立してそのペーパーカンパニーに投資をさせると、以下の図のようになります。
ペーパーカンパニーを間に挟むだけで節税できるなら簡単ですが、そう単純にいくでしょうか?
ペーパーカンパニーを使った節税を阻止する外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)
もちろん、日本の国税庁の側から見れば、間に香港法人が設立されるだけで取れる税金が減ってしまうのは困ります。
そこで、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)が設けられています。
タックスヘイブン対策税制が適用される要件は:
1. 日本法人または日本居住者により、発行済株式総数の50%超を直接または間接に保有されている外国法人(これを「外国関係会社」と言います)であること。
2. 「外国関係会社」の租税負担割合が20%未満であること。(これを「特定外国子会社等」といいます。)
3. 対象となっている日本法人または日本居住者が「特定外国子会社等」の株式を10%以上保有していること。
そして、タックスヘイブン対策税制が適用されると:
対象者が法人(日本法人)であれば、自己の課税所得として合算されます。
対象者が個人(日本居住者)であれば雑所得とされます。
つまり、単にペーパーカンパニーの香港法人を設立しても、タックスヘイブン対策税制の適用により、法人設立・維持費用の分だけ出費がかさんでしまった、ということになりかねません。
(香港の法人設立サービス業者の中には、このことを知りつつアドバイスしない業者もあるのでしょうか。タックスヘイブン対策税制の適用により明らかに損するとしか思えない香港法人を見かけることもあります。)
さらに、OECD自動的情報交換スタートで、税務署に情報が筒抜け。
勿論、「香港法人を設立し、日本の高い税率を回避しています!」と言っている人がいるのも事実です。
ただ、「香港法人を設立し、日本の高い税率を回避しています!」と言っている人の中には、たまたま税務署に今までばれていなかったというだけの人も少なくありません。
しかし、今後はそう簡単にはいかなくなります。
OWL Investmentsの別記事でもお伝えしたように、OECDによる金融口座自動的交換制度が2018年に開始されます。そうすると、香港法人の実質的所有者が日本法人・日本居住者の場合、その香港法人の口座情報が、日本の国税庁に自動的に送付され、香港の口座情報が丸見えになる訳です。今までのような、ペーパーカンパニーを使った単純な節税は通用しないでしょう。
もちろん、日本法人・日本居住者が設立する香港法人のすべてが低税率を享受できない訳ではありません。タックスプランニングの工夫次第で、香港の低税率を享受することは可能です。
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