2015/10/12
元ビジネスパートナーのB氏に騙されてというか不注意で、考えていた内容とは全く異なる文面の和解契約書にサインしてしまったA氏。横領されたうえ更に大金を払わされることが悔しく、夜も眠れない日が続きましたが、いかに挽回したのか。紛争解決・逆襲編。
Aさん、まず、(Bさんに騙されてサインした)和解契約書を読み直すことから始めました。
「両者の間には本契約に定める外、何らの債権債務もない。」という清算条項がネックになっている訳ですが、この文言の解釈を何とかできないかという方法です。
残念ながら、無理です。
勿論、和解契約書を締結した後でBさんがAさんを殴りつけ、AさんがBさんに損害賠償請求をするというようなケース(和解契約書締結後の事情)であれば別でしょう。でも、横領は和解契約書を締結する前の事実ですから、横領の金を返せと言ってみても無理です。
私達とAさんは検討しました。ポイントは2点です。
ということは、Bさんの弱みを突く→その弱みを交渉材料に和解契約書のまき直しを求めるという作戦がベストでしょう。
「両者の間には本契約に定める外、何らの債権債務もない。」という文言があり、和解契約書締結前の事情を蒸し返せないのがAさんにとって厳しい所ですが、Aさん以外の人にとっては、そんな文言、気になりません。
ということであれば、頼もしい味方警察にBさんの横領事件を捜査してもらいましょう。Aさんと私達は共同で横領事件の経緯と背景事情を整理して、警察に被害届を出しに行きました。
その後、しばらくすると、Bさんのオフィスに捜査の手が入ったのでしょう、Bさんの側から泣きが入ってきました。ここぞとばかり、準備しておいた「まき直し用の和解契約書案」を手に交渉、見事、まき直し用和解契約書を締結しました。横領金を返還させたうえ、旧和解契約書を無効にしたことは言うまでもありません。
このケースでは、Bさんから泣きが入って和解契約書を巻きなおしましたが、こう上手く進むとは限りません。
警察の捜査が入ったと思われるものの、泣きを入れてくることなく逃亡というケースもありました。まぁ、自分達に不利な契約書は残るものの、その契約書を行使してくることは無いでしょうから、これはこれで、悪くない結論ですね。
最悪のパターンは、警察が動いてくれない場合です。実際、殺人とか傷害のような粗暴犯であれば警察はすぐに動くのですが、財産犯、とくに法的に難しい横領や背任の場合、動いてくれないことも少なくないのです。(日本流にいえば、民事不介入でしょうか。)
だからこそ、警察がすぐに動いてくれるよう、被害届を出す前に専門家の助けを借りて十分な事前準備をすることが大切だと思います。