2016/02/08
日本と中国との間には日中租税条約が結ばれていましたが、「一国二制度」の下で「特別行政区」とされている香港には、日中租税条約は適用されていませんでした。しかし、2011年から、日本と香港の間では、日中租税条約とは別に、日本香港租税協定が施行されています。
日本香港租税協定で定められた内容は様々で、二重課税の防止(一つの収入が二つの国で課税されてしまうことの無いよう調整する)等、納税者にとってメリットのある定めもあります。
しかし、納税者にメリットのあることばかり定められている訳ではありません。
アメがあればムチもあります。それが情報交換制度です。
国税庁・税務署は厳しいし、しつこいですよね。苦しめられた人は多いと思います。
でも、国税庁・税務署が偉そうな行動をとることができるのは、日本国内だけで、外国では彼らは偉そうな態度はとれません。彼らの調査権限は国家権力の一環として行われていて、国家権力を行使できるのは、日本国内だけだからです。
つまり、取引の相手方が外国人・外国企業の場合、国税庁・税務署は外国(=日本の領土の外)に出向いて国家権力を背景に調査することができないのです。
これを利用して、外国との取引を利用して、脱税や(違法とまでは言えない)租税回避行為を行う企業が増えてきています。
情報交換制度というのは、この国家権力の弱点(=国境の外では強制的な力を行使できない)を補うべく、税務当局同士が情報交換して、国際的な脱税や租税回避行為に対処しようという制度なのです。
情報交換制度は、大きく3つに分けられます。①要請に基づく情報交換、②自発的情報交換、③自動的情報交換です。日本の国税庁が香港の税務当局から情報を得る場合を例に見てみましょう。
国税庁が、この3つの情報交換により脱税が発覚し課税した例を、(香港とは特定していませんが)公表しています。見てみましょう。
①要請に基づく情報交換の例
日本の国税庁が日本の会社(A社)に対し法人税調査をしたところ、A社はB国企業からの輸入取引に関してB国の個人に対してアドバイザリーフィーを支払っているとの説明がなされました。しかし、そのアドバイスが本当に行われたという確証は得られませんでした。そこで、日本の国税庁がB国の税務当局に対して、そのアドバイスに関する事実関係の確認を依頼したところ、そのアドバイザリーフィーは架空であることが発覚した。
一般に、要請に基づく情報交換は、国によって協力してくれる程度がかなりまちまちと言われています。「まちまち」というのは、「協力しようとする意欲の度合」と「仕事をきっちりやる能力」で決まるということです。
香港は、比較的きっちり要請に対応する方ではないでしょうか。
これを聞いて「香港ではなく、協力する度合の低い国に財産を移そう」と思う方もいるかも知れませんが、そういう国は、そもそもカントリーリスクが高そうです。
②自発的情報交換の例
E国企業が日本企業(F社)に対して外注費を支払っていたが、その支払いが銀行送金ではなく現金であったため、F社がこの収入を計上せず脱税する危険が高いのではないかとE国税務当局が判断し、自発的に日本の国税庁に情報を提供した。
③自動的情報交換の例
G国の銀行(H銀行)が同行口座の預金への利子支払情報をG国税務当局に申告した。この情報は自動的に日本の国税庁にも情報提供されている。H銀行に口座を有している日本居住者I氏はH銀行の預金に付された利息を申告をしていなかったため、日本の国税庁はこれに課税した。
これらから分かるように、日本で納税義務のある企業、日本で納税義務のある日本居住者は、海外との取引・海外の銀行口座への預金であっても、どんどん情報が筒抜けとなっています。
納税額をできる限り抑えたいという気持ちは当然ですが、脱税は違法ですし、摘発はどんどん厳しさを増しています。
私達は、香港の合法的な活用法で、皆様をお手伝いしていきたいと思います。
問い合わせ先(OWL Hong Kong Limited):info@owlhongkong.com