2023/03/13
OWLのお客様の中には、イギリスの教育に関心をお持ちの方も多くいらっしゃいます。
そうした方々が現地訪問する際の案内をしてもらっているAIさんに話を聞きました。
AIさんは、日本で小学3年を終えた1983年3月に英国に移住、その後、大学まで英国で教育を受けました。
OWL: 自己紹介をお願いできますか?
AI :1983年3月から英国に住み、そのまま大学まで英国で教育を受け、ロンドンで就職しました。
OWL :AIさんは、英国に来た頃、どれくらい英語をできたのですか?
AI :私は米国ニューヨーク生まれで、4歳のとき日本に戻ってきました。ニューヨークに住んでいた頃は英語を普通に話していたようなのですが、日本の幼稚園・小学校に通っている間にほとんど英語を話せなくなっていました。英国に行くことが決まった後、日本にいた最後の半年くらい、英語の家庭教師を付けてもらってから学び直しました。
OWL :英国では、どこのどういう学校に通っていたのですか?
AI :英国に4月に来てから9月までは日本人学校に通っていました。
その後、英国の新年度から、親はNorth Londdon Collegiate School(ノース・ロンドン・カレッジ・スクール)という、英国の国際バカロレア認定校としてトップレベルと言われる、小学校から高校まで一貫の私立女子校に入れようとしたのですが、私の英語力が高くないということで入学できませんでした。
そこで、地元の公立校に入りました。
当時住んでいたのは、ロンドン北部、地下鉄Jubilee Lineの終点、スタンモア駅(Stanmore station)の近くでした。日本人の少ないエリアです。
この地域の、Aylward Primary School(エールワード・プライマリースクール)という公立小学校に入りました。
1クラスあたり20人から30人だったので、東京の学校と比べたら少人数ではないでしょうか。
生徒の約75%が白人の英国人、のこり25%が黒人やインド系だったと思うのですが、あまりよく覚えていません。
たまたま同級生に日本人が一人だけいて、私のお世話係をしてくれたのを覚えています。
(Aylward Primary SchoolのFacebookページより)
(Aylward Primary SchoolのFacebookページより)
OWL :小学校での勉強はいかがでしたか?
AI :その当時は英語の話せない生徒のサポート体制が整っておらず、授業についていくことが難しく、周囲のイギリス人と同じレベルには届きませんでした。
日本では掛け算を覚えられず算数が苦手科目だったのですが、英国の小学校では私が入るときから掛け算の始まるところで、算数が得意科目になったのは良かったですね。
OWL :中学校も地元の公立校でしたか?
AI :はい、住んでいた地区に割り振られた公立のBentley Wood High School(ベントレーウッド・ハイスクール)に行きました。
ただ、13歳の時、海外から来た生徒の受け入れ態勢が整っていると言われていた全寮制私立女子校のOakdene School(オークディーン・スクール)に転校しました。
でも、入ってみたら、生徒同士のいじめや生徒による先生へのいじめなどが横行する荒れた学校でショックを受けましたね。
11年生終了時(15~16歳)に英国全土共通で受けるGCSEというテストを終え、The Royal Masonic School for Girlsという私立の全寮制女子高校に転校しましたが、私の出た1年後には廃校になりましたから、本当に酷い学校だったんだと思います。
(The Royal Masonic School for GirlsのWebsiteより)
OWL :日本人目線では高校で全寮制というのは稀だと思うのですが、英国では普通なのですか?たしかに、有名なパブリックスクールは全寮制だなどと聞くことはありますが。
AI :寮費がかかるので労働者階級では多くないでしょうけれども、上流階級やホワイトカラーの上の方のクラスの家庭では、子供を寮に入れる家庭は多いと思います。
兄は中学校から、弟は小学校から全寮制でした。だから、家族なのに顔を合わせるのは年に数日みたいな感じでしたね。
OWL :お兄さん・弟さんの経歴も伺ってもよいですか?
AI :兄は、Aldenham Senior School(オルデナム・シニアスクール)という中学校・高校に通っていました。大学は、The University of Cambridge(ケンブリッジ大学)も合格していたのですが、University of Bristol(ブリストル大学)に進学し、Mechanical Engineering(機械工学)を専攻していました。
弟は、Eton College(イートン校)からUniversity of Oxford(オックスフォード大学)に進学し、Political Philosophy and Economics(政治哲学経済)を専攻していました。
(Eton CollegeのWebsiteより)
(Eton CollegeのWebsiteより)
OWL :イートン校というと日本人でもよく知られているパブリックスクールですよね。
日本人でも入れるのですね。
AI :一般的には、日本人には難しいと思います。
イートン校のような名門パブリックスクールは13歳から入学するのが普通なのですが、10歳になる年の6月末までに入学希望届を出さないと、学費免除の特別枠以外の通常枠には入れないなど、かなり早い時期から準備をすることが求められるのです。妊娠中から準備するなどという話もあるくらいです。
弟の場合、音楽(ピアノ)が得意だったこともあり、小学校(私立全寮制小学校)の先生に後押しされてイートン校の音楽奨学生徒枠で受けられたというところです。
OWL :大学受験はどうでしたか?
AI :高校の頃には日本語を使わなくなっていたので日本語力が落ちていて、日本語も学べる大学に行こうと思い、The University of Sheffield(シェフィールド大学)に入り、Social policy(社会政策)を学びました。
OWL :入学試験の仕組みはどうなっているのですか?
日本であれば、基本的に、ペーパー試験で決まるのですが、違うのでしょうか?
AI :各大学で入学試験を実施する訳ではなく、出願書類、学校の成績表、面接などで条件付き入学オファーをもらいます。その条件とは、英国全土共通で受けるA-Levelというテストの結果に直結しており、テストの結果次第で合否が決まります。
いまでは、「UCAS(Universities and Colleges Admissions Service)」という統一的な出願機関のオンライン化が進んだので、複数の志望先への出願、出願後の変更、出願進行状況の追跡・確認、合否通知の受け取り、入学意思の返事まで、非常に便利に行えるようになりました。
OWL :AIさんの場合、小学校時代にイギリスに来てから、大学まで完全にイギリスの教育のシステムの中で学んできましたが、日本の教育と英国の教育を比較してどのように思いますか?
AI :日本の教育は、基本的学力を身に付けさせる仕組みとしてよくできていると思います。一方、英国の教育は、一つの物事から深く考えさせようとしていると思います。
いわば、「学び方重視」の日本の教育、「考え方重視」の英国の教育と対比できると思います。
英国の小学校~高校では、どの学校を選ぶのか、どうやって合格しやすく後押ししていくかなど、親のやるべきことが多く、日本人にとっては非常に負担が大きいと思います。
ですから、英国の教育を受けさせたいというのであれば、高校までは日本で学び、大学から英国というのでも良いかなと思います。
OWL :有難うございました。
英国の学校を見学したいというお客様が訪英するときには、よろしくお願いします。