2018/01/22
香港には、英語で学ぶ学習環境はもちろん、日本語で学ぶことのできる学習環境も整っています。 日本人が国際都市で学ぶことにはどういう意義があるのか、日本人学校・インターナショナルスクールなど様々な学校で学ぶ生徒たちが塾という場所に集まって学ぶ意義はどこにあるのか、epis Education Centre代表の澤村先生にインタビューしました。
OWL:香港で勉強をする生徒さん(小中学生)は、日本人学校・インターナショナルスクール、どちらに通う生徒さんが多いでしょうか?
澤村: episに通う生徒は、日本人学校・インターナショナルスクールとも、約50%ずつ。おそらくepisに通う生徒は、香港にある他の日本人向けの塾に比べても、インターナショナルスクールに通っている比率が高いのではないかと思います。
OWL:日本人学校ではなくインターナショナルスクールを選ぶご家庭には、どのような傾向がありますか?
澤村:一都市への駐在期間はだいたい3年から5年ですが、その任期を終えた後、次の任地が日本でなく他の海外の都市というケースが増えています。そうしたご家庭では、せっかく海外で長く暮らすのだから子供をインターナショナルスクールで学ばせようとする傾向が高いですね。 もう一つは、国際結婚をされてご両親のどちらかが日本人というご家庭ですね。インターナショナルスクール(インター校)では英語で学び、episでは日本語で学んでほしいということで、episにお子様を通わせるご家庭も多いです。
OWL:小学4年生以降では、受験コース・普通コース共に、日本人小学校とインター校の子が一緒の中学受験クラスで授業を受けているんですね。インター校の生徒は日本語が苦手で、日本人小学校の生徒と同じように日本語で中学受験の勉強をするのは難しいのではないか?と思うのですが、一緒のクラスで勉強できますか?
澤村:インター校の子が、日本の受験に適応できないとは限らないんですよ。例えば、以前、小学1年から小学4年までアメリカの現地校に通い、小学5年から香港に来てESFに2年間通い、その2年間にepisに来て勉強していた子がいました。 彼は、アメリカに住んでいた時代は、日本語は家庭で話していたくらいで勉強としてはほとんどしておらず、小学5年からepisで始めたに等しい状態でした。 しかし、小学6年の時に四谷大塚の全国模試で、国語で全国一位を取りました。苦手なはずの国語の点数で全国一位です。その後、中学受験をして駒場東邦中学校・高校に入り、現在は東大に通っています。
OWL:日本語の勉強を始めて2年間で全国模試一位ですか?!どうして、そんなに急に日本語力が伸びたのでしょう?
澤村:彼の場合、ご両親が家庭でよく読書をされていたんですね。その影響で、お子さんも読書をするようになり、日本語力の急上昇につながったと思います。彼はとくに司馬遼太郎の小説を読んでいましたが、episの他の生徒も彼から影響を受けて、司馬遼太郎の小説がクラス内で流行りましたね。そのクラスの生徒達は軒並み難関校に合格して、同じクラスで東大に行っている人が3人、慶應大学に行っている人が6人いるんですよ。
OWL:インター校にお子さんを通わせる親はもともと教育熱心ということは言えますか?
澤村:はい、当塾に来ているインター校のご家庭を見る限り、日本では私立中学への進学を考えているご家庭が、香港では日本人小学校を選ばずインター校に入れていらっしゃるように見えます。もともと教育熱心で、英語も日本語もきちんとやらせているということは言えるでしょうね。
OWL:小学・中学時代を香港で学ぶ場合、その後の進路はどうする子供たちが多いでしょうか?
澤村:中学卒業後も日本に戻らない子供達は、欧米の大学へ進むことを考えています。日本の学校・塾で数学をきちんと勉強していると、米国の大学進学適性試験であるSATを受けるときに対応しやすいなど、日本的な勉強も欧米の大学進学にも意外につながっています。 でも、一番の多数派は、お子様の進路を、日本の大学・欧米の大学の両にらみで考えているご両親でしょう。
OWL:日本の大学・欧米の大学の両にらみで考えている方の場合、どういった悩みを抱えていますか?
澤村:子供はアメリカの大学へ行きたがっているが、親は日本の大学へ行かせたいという方も少なくありません。 お子さんとしては、アメリカの大学で勉強したいという気持ちもあるのですが、それ以上に、ずっとインター校で過ごしてきたので18歳から日本の大学で溶け込めるだろうかという不安が理由になっているケースも多いように思います。 一方、親の側としては、ご両親とも日本人で、お子さんも歴史的・文化的バックグラウンドが日本なので、高校から大学院のどこかのタイミングで日本の教育をしっかり受け、日本の文化も学び、恥ずかしくない日本語を使える状態でないと、世界で日本人として活躍できないのではないかと考えていることも多いです。 私自身の考えとしても、どこかのタイミングで日本の教育を受けてほしい気持ちはあります。ですから、香港で英語で勉強をしているお子さんこそ、episで日本語で学ぶ意義は大きいと思います。
OWL:受験向けではないクラスもありますね。
澤村:現時点では、小学2年から中学3年までの日本の受験を目標にしたコースがメインです。日本の受験を目標としないコースとしては、小学4〜5年対象の「インター探究科」があります。当塾では土曜日に補習校の小学1〜3年の継承クラスを開講していますが、小学4年以上の子供達向けに、知的レベルの高い日本語でのクラスをして欲しいという要望があり、今年から新設したのが、「インター探求科」です。理科、社会、算数を日本語で勉強しています。
OWL:ところで、低学年向けの「アルゴクラブ」とは、どんなクラスなのでしょうか?
澤村:算数のパズル教室で、小学3年までの生徒に立体や平面パズルやアルゴゲームという推理ゲームを使っています。図形の把握能力は小学3年(9歳)までしか身に付かないと言われていますが、立体などをとらえる力を養おうとしています。「アルゴクラブ」には、日本人学校に通う生徒に加え、インターナショナルスクールに通う生徒も多く在籍しています。楽しく、知的レベルも高い算数パズル教室で学びながら、日本語も習得させたいという保護者のご希望に合致しているコースになっています。「アルゴクラブ」は中学受験にもつながっていくコースですが、「日本の中学は受験しない」という子どもたちも多く在籍しているのはそのためです。
OWL:インター高校生サポートのクラスについてお話しをお伺いしたいと思います。小論文A・Bはどのような学校を目指している人にとっての、コースなのでしょうか?
澤村:日本の大学受験の小論文への対応したコースとなっています。
OWL:特定の数学や物理・歴史などの科目を教える、という事ではないけれど日本語でいろいろなことを学ぶという内容ですか?
澤村:基本的には日本語で、社会科学、自然科学、時事問題について学習し、出題されたテーマに対して日本語で小論文を作成すると言う内容です。 大学の小論文は専門的な内容から問われるので、日本にいて理解しておかなければならない一般的なこと、社会的な事案、または世界の情勢についても学んでおかなければなりません。 このコースで得た力は、もちろん英文エッセイでも生かされると思っています。パラグラフ構成や文章の流れをどうするかは、日本語でも英語でもあまり関係なく、日本語できちんとした小論文をかける人は英語でも小論文が書けると考えています。 ですから、日本語で、社会科学、自然科学、時事問題について学習し、文章の書き方を勉強することを通じて、知的レベルを上げていくことを目標としています。
OWL:今後、帰国生が日本の大学を受験する上で、小論文の他にも必要な事は増えるのでしょうか?
澤村:早稲田大学の商学部は帰国生に対して数学を課してきています。また慶應大学の経済学部と商学部では、SAT Reasoning TestのMathに加え、Subject TestのMath Level 2の受験も必須となり、 かなり難しい高校数学を英語で受けることになります。IBに関しても、慶応の経済・商学部では数学を含むことが必須です。ですから、希望が集まればIBやSATに対応できるような高校数学を今後開講していく意義は大きいと思います。
OWL:そうすると、これまでは、日本の中学・高校受験をする生徒向けのコース中心だったけれども、徐々に、それ以外のコースも増えてくるということでしょうか?
澤村:はい、今のところ、日本の中学・高校受験を目標としないコースとしては、小学4〜5年生の「インター探究科」と高校生向けのインター校生徒サポートがメインですが、「インター探究科」を上へ伸ばし、高等部で行っているインター校サポートのコースを下へと伸ばしていく必要もあるのではないか、そうすれば小学4年~中学3年の生徒で日本の受験を意識していない生徒へのサポートが万全になるのではないかと考えています。
OWL:episは、有名中学・高校に合格する生徒が多く、受験塾と言う印象を強く持っていました。しかし、受験塾というだけでない印象を持つようになってきました。
澤村:まず、日本の教育の良くない部分が誇張されることもありますが、悪い部分だけとは思っていません。一昨年、開成中学・高校の柳沢校長が日本人倶楽部で講演されましたが、「開成の高校3年生は世界最強だ」と仰っていました。私も入学試験問題を見ていて、日本の御三家レベルの学校には、本質的な理解までしていないと合格できないと思います。しかも、教育レベルが高いだけでなく、スポーツもきちんとやり、逞しい環境の中で育っていると思います。
OWL:そういう日本の難関中学・高校を目指す生徒が身近にいると、日本の難関中学・高校を目指さない生徒も刺激を受けそうですね。
澤村:そうですね。日本の難関中学・高校を受験しないインター校の生徒も、隣で一生懸命受験勉強をやっているのを見て、将来を考えるし触発されていると思います。
OWL:逆に、日本の難関中学・高校を目指す生徒も、epis香港で学ぶが故のメリットはありますか?
澤村:勿論です。同じクラスの中にインター校で学ぶ生徒、様々な国籍の生徒がいて、彼らからも刺激を受けている。まさしく、ミニ・ダイバーシティーがこのクラスの中で成り立っていて、受験勉強だけでなく大きな学びをも得ていると感じます。
OWL:これこそ、香港の教育ならではのメリットですね。今日は、有難うございました。
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